驚きの闇の深さ ページ9
「おいおい、この着物は
俺の一張羅なんだ。
引っ張りすぎて裾が破れました、なんて
驚きは求めてないからな」
「黒鶴が勝手に離れなければ、
俺は裾なんて破かん」
「破る気なのか!?」
冗談で済まそうと思ったのに、
返ってきた返事はわりとガチだった。
こんな驚き、俺は求めてない…!
愕然として三日月を凝視する俺に、
当の本人は不満げに頬をふくらませる。
「天下五剣で最も美しいと言われる俺を
袖にするなど、黒鶴か鶴くらいだ…」
袖にした覚えは全くないんだが。
そもそも、天下五剣ってなんだ?
五人組とかいう、そういうやつか?
拗ねているらしい三日月は
大層機嫌が悪いらしく、
じとっ、とした目で俺を睨んでくる。
睨む姿も美しいと思う俺も、
大概終わってるな。
はぁ、と自分に対してのため息は吐き、
これからする予定を言ってやる。
「光忠に会いに行こうと思ってな。
一期一振の前に、光忠の精神状態を
安定させておこうというわけだ」
俺の口から光忠の名前が出たことに
怪訝そうな表情を浮かべながらも、
いまだに不満げな表情の三日月。
「…俺を、置いていくのか」
ぽつりと呟かれたその一言は、
俺の心にひどく響いた。
その時になって初めて、
三日月の表情が変わる。
「俺が、不殺の刀だからか。
美しいだけで、実用性に欠けるからか。
…俺を本丸に閉じ込めたままなのは、
それが原因か」
悲痛に歪む顔、悔しげな瞳。
その姿がどうしても、誰かと被った。
…一番闇が深いのは、もしかしたら
三日月なのかもしれないな。
鳴狐や鶴丸に、機会があれば聞いておこう。
当面は、三日月の面倒を見つつ
時間があれば光忠も、といったところか。
ますます目が離せないな、天下五剣様は。
「何を思い詰めているのかは知らんが、
置いていかれるのがイヤなら一緒に
光忠を探してくれるかい?
悪いが、光忠は絶対に探して
接触しなきゃならないんだ」
ほら、と手を差し出すと、三日月の表情が
ほんのわずかに和らいだ、…気がする。
初めて会ったときのようにオロオロと
視線をさ迷わせて、俺の手と顔を
交互に見つめる。
今更ながらに、遠慮してるようだ。
置いていかれることに対して、
ずいぶんと不満げだったのに。
仕方なく三日月の手を強引にとって、
手を繋ぐ。
引っ張って、俺の隣に立たせれば
もう逃げられないし、逃がさない。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 316人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月珠 - 1から読みたいのでパスワードを教えてください！ (2022年12月23日 17時) (
レス) id: d908ec33e4 (このIDを非表示/違反報告)
眠民(プロフ) - 1から読みたいのですがパスワードが掛かっていて読めないのでパスワード解除、もしくはパスワードを何処かに書いて頂けませんか？ (2022年9月3日 5時) (レス) id: fcb69bf060 (このIDを非表示/違反報告)
？(^^)？ - 1から読みたいのですがパスワードを教えていただけませんか？お願いします！ (2022年4月21日 22時) (レス) id: 2bcf67198a (このIDを非表示/違反報告)
Rin?^^*(プロフ) - 1から読みたいのですが、パスワードを教えて頂けないでしょうか？ (2020年10月11日 14時) (レス) id: ed59144b66 (このIDを非表示/違反報告)
はるかかなた(プロフ) - 一から読みたいのですが、パスワード教えていただけませんか？お願いいたします。 (2020年9月9日 23時) (レス) id: b232e8656d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：師走氷 | 作成日時：2016年8月19日 12時
