【刀剣乱舞】驚きの毎日を、弐【男主】

驚きの状態 ページ33

俺は清光じゃないんだが、

もしかして兼さんが言っていた

『一人で立てない』という意味は。

「清光、おかえり!

やっぱり折れてなんてなかったんだね」

俺を『清光』の代わりとして、

安定の精神を落ち着かせる、という

意味なのか…?

首落ちて死ねと言っていたときには、

既に俺は清光として見られていた?

濁りきっていた瞳が嘘のように

キラキラと輝いて、こちらに

抱きついてくる安定。

ここで俺が清光じゃないと否定するのは

簡単だが、兼さんは時間が経てば

一人で立てると言っていた。

…だったら、俺が清光の代わりを

務めるしかない。

鶴丸の代わりも、清光の代わりも。

それが彼らの幸せになるのなら、

俺は全てを受け入れよう。

また兼さんや鳴狐、鶴丸に

清光がどんな刀だったか

教えてもらわないとな。

あ、あと時間の余裕があれば長谷部にも

ぜひ意見を訊きたい。

清光とやらのしゃべり方や性格が

分からない今、迂闊に発言するのは

まずいだろう。

黙って抱き締め返して、離れる。

「清光? どうしたの?」

途端に悲しそうな顔をする安定には悪いが、

ここは一旦距離を置いた方が良いだろう。

ちょいちょい、と三日月の袖を引っ張って

耳元に口を寄せる。

「三日月、俺は用事を思い出した。

安定に、明日話そうって言ってくれないか」

「俺がか?」

怪訝そうな顔をした三日月に考えを

伝えると、あいわかったという返事が

もらえた。

「大和、だったな。黒鶴…いや、清光は

ちょっと調子が優れんようでな。

悪いが、話は明日にして欲しいと」

当たり障りのない言葉で遠回しに

安定の用件を却下すると、

安定はあっさりと引いてくれた。

調子が優れない、という言葉が

効いたらしい。

絶対に明日ね、と約束をして、

俺と三日月は一期一振の部屋の前に

行こうとしたんだが。

「おい黒鶴、どこへ行く気だ」

「あ、長谷部」

どこからかやって来た長谷部に見つかり、

手入れ部屋へ連行された。

なんだなんだと手入れ部屋の中を覗くと、

そこにはやけ酒を飲む不動がいた。

久しぶりに外の世界に顕現したと思ったら、

仲間が大勢減っていて、しかも

うちの何人かは盛大にぶっ壊れていた。

その現実に目を背けたいがために、

今の状況が出来上がったようだ。

ああ面倒なことになりそうだと

苦笑いしながら、長谷部の視線に

急かされ、俺は不動に近づいた。

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