【刀剣乱舞】驚きの毎日を、弐【男主】

驚きのキャパオーバー ページ29

「鶴瀬 A。

それが俺の本当の名前なんだ。

実は人間でな、ひょんなことから鶴丸に

成り代わったんだが…まぁ、気軽に

黒鶴とでも呼んでくれ」

「…よく分からんが、それは俺に

教えても良いのか?

さっきAは、俺だけは特別だと

言っていたが…本当は、誰にも悟られては

いけない情報ではないのか?」

さすが三日月、壊れていても鋭い。

全くもってその通り、と言えば少し

語弊があるが、俺自身が隠し通したい

情報であることには変わりない。

それでもこの大事なことを話したのは、

もう二度と三日月を壊したくないからだ。

信用と信頼が足りなくて、最悪の形を

招いてしまったあの事態を、

もう繰り返したくないから。

…なぁんて本人には言えないから、

適当に笑って誤魔化すが。

「いやなに、別にやましいことは

考えちゃあいない。

俺はきみと仲良くなりたいだけさ。

きみの傍にいる資格が欲しいから、

隠し事はしたくないと思ってな。

あと、二人の時は良いが周りに人が

いるときは黒鶴呼びで頼むぜ?」

半分嘘で、半分事実だ。

また一から、今度こそ確かな絆が

欲しいから、今度はあけっぴろげに

自分をさらす。

そうすれば、戻れる可能性が

ぐんと上がる気がするからな。

にこりと笑ってな? と首を傾けると、

三日月がふ、と面白そうに笑った。

「傍にいる資格が欲しいなんて、

ずいぶん変わった考えをしているな。

良いぞ良いぞ、傍にいて良し」

あっはっはっ、と楽しくてたまらないと

いった表情をする三日月。

いきなり笑い声をあげた三日月に

状況を理解できていなかった不動は、

ついにぽろぽろ泣き出した。

キャパオーバーしたらしい。

「もう分かんねぇよぉ…」

暴れるのをやめて床に顔を伏せる不動に、

長谷部は何を思ったか俺と三日月の

襟首を掴んだ。

「貴様らは何故いつもそう問題を

起こすんだ! もう手入れ部屋に来るな!!」

八つ当たりにも似たその怒声と共に、

ゴミを棄てるような軽い動作でぽいっ、と

手入れ部屋から追い出された。解せぬ。

「あの刀からも俺と同じ神の匂いがしたな…

それにしても、はて。

俺は怒られるようなことを何かしたか?」

「何もしてないんじゃないか?

大体、長谷部のいつもっていつだよ。

俺は鶴丸じゃないから、いつもとか

言われても分からないっての」

三日月と一緒に手入れ部屋の前で

追い出された理由を考えていると、

何してんだよ、と声をかけられた。

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