【刀剣乱舞】驚きの毎日を、弐【男主】

驚きの微かな希望 ページ25

まだ三日月は、

完全に壊れた訳じゃない。

その言葉に、安心を覚えた。

まだ救える可能性があるならば、

是可否でも救いたい。

三日月のほわほわしたあの笑顔は、

実は結構好きだった。

「俺は、救うことが出来るのか…?」

「出来るさ。きみには、その可能性が

充分にあるんだからな!」

不安げな俺を笑い飛ばして、

わしゃわしゃと頭を撫でる鶴丸。

こんな近くで鶴丸と触れあったことは、

何気に初めてかもしれなかった。

ひとしきり頭を撫で終わった鶴丸は、

そうだ、と思い出したように

手を叩いた。

最近、この光景をよく見る気がする。

霞んできた視界に、もうすぐ夢が

終わるのだと理解する。

完全に夢が途切れる前に、鶴丸は

にこりと笑って手を降ってくれた。

「きみが本丸を救えたら、

Aは元の世界へ帰れる。

俺も、元々の自分の身体に戻る。

だから、それまでは本丸で頑張ってくれ」

最後に、励ましの言葉を俺に送りながら。

鶴丸の優しさが温かくて、優しくて。

目尻にまた浮かんできた温かいものには、

気付かない振りをした。









「おい、いい加減に起きろ貴様!!」

耳元で聞こえた怒号に、鼓膜が

破れそうだと思いながら反射的に

飛び起き上がった。

なんだなんだと目覚めたばかりの目で

周りを確認すると、不機嫌そうに

腕組みをしている長谷部を発見。

「貴様、何を呑気に眠りこけている!

怠慢は許さんぞ!!」

「ちょっ、落ち着け長谷部!」

激情のままに俺に殴りかかろうとする

長谷部を必死に押しとどめながら、

改めて周りを確認する。

部屋にある物の配置に見覚えがある。

疲れきった様子の妖精が床に

寝そべっているところを見るに、

ここは手入れ部屋のようだった。

俺の記憶は三日月に謝罪したところで

途切れているから、何故自分が

手入れ部屋にいるのか理解できない。

怪我もしていないしな。

部屋にいるのは俺と、殴りかかろうと

腕を振り回している長谷部、

うつ伏せに倒れている三日月。

「お、おい。三日月、死んでるのか!?」

仰向けじゃない分、顔が見えないから

判断がつかない。

目覚めたばかりの体を無理矢理動かして、

這いつくばるように三日月の元へ。

勝手に仰向けにして息を確認したところ、

どうやら眠っているだけだったようなので

余計な心配だったようだ。

杞憂に変わってよかった。

ここで死んでたりしたら、

それこそ驚き云々の問題じゃないからな。

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