【刀剣乱舞】驚きの毎日を、弐【男主】

驚きの…嗚呼、驚きの ページ22

「三日月は俺に任せて、平野は

一期一振のところへ行ってくれ」

急いで平野の元へ走り、

悲痛に叫び崩れ落ちる三日月を支える。

平野は深く頭を下げて、

前田の元へ駆け寄った。

一期一振を止めるのに苦戦していた

前田だったが、平野の協力もあり、

一期一振を部屋に入れることができた。

あとは前田たちに任せるとして、

俺は三日月に改めて向き直った。

「天下五剣とは名ばかりの俺を

兄様と慕ったばかりに、鶴は審神者に

目をつけられ暴力を振るわれ

消えてしまった。ああ、消えた。

黒鶴だって、置いていかないと言ったのに

俺を置いていった。あああ消えた。

消えた、また消えた、あああああああ嗚呼」

ぶつぶつぶつぶつと、呪祖のように

言葉を吐きまくる三日月。

その闇は、予想していたものよりも

根深く、暗い。

「三日月、三日月、俺だ、黒鶴だ。

消えてなんかいない。俺はここにいる!!」

声をかけようにも肩を揺さぶろうにも、

一向に応じる気配のない三日月。

目の焦点は、合っていない。

完全にとんでしまったのだと、

理解できた。

「一人にしないでくれ、消えないでくれ。

置いていかないでくれ、泣かないでくれ。

辛い苦しい寂しい痛い怖い痛い怖い痛い」

瞳の三日月は、見えない。

綺麗だった三日月の顔は、もう表情が

死滅していた。

精巧に作られた人形のような不気味さと、

どこまでも深い悲しみの音。

いつしか、肩を揺さぶるのも

やめてしまった。

三日月は、戻ってこない。

どうしようもないところまで、

壊れてしまった。

…他でもない、俺のせいで。

俺が一期一振を前に戦線離脱して

いなければ、きっと三日月は

壊れることなどなかっただろうに。

何も、救えていない。

「…すまん。すまない、三日月」

三日月の負っていた傷は、

予想以上に深かった。

その傷に気付いてやれなかったのは

俺の責任だ。とどめを、さしてしまった。

三日月は何事も笑っていたが、

今思えば空元気だっただけだ。

この本丸で傷を負っていない刀など、

一振りだっていないのに。

「鶴丸、ごめん。何もできなかった。

貴方の兄様を、壊してしまった。

…ごめん、ごめんなさい、三日月」

痛みを知りながらも、俺はその痛みを

無視してしまった。

中途半端に手をさしのべた結果、これだ。

壊れた三日月の頬に手を添えて、

包み込む。

視線は交わらない、声も届かない。

包み込んだ三日月の顔は、

驚くほど冷たかった。

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