第6話：限りある大地 ページ6
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｢ということで、今日から私はプロイビートになりましたぁ｣
｢ようプロイビート〜、ひゅーひゅー｣
｢少しも感情籠ってない称賛やめて、弔くん｣
トガが儀礼的にぱちぱちと浅い拍手をした後、コンプレスはAの前に立ち、手の甲と平を交互に見せた。
｢タネも仕掛けもありません……ほいっ、と｣
｢わ、すごい｣
｢デビュー記念さ、俺からの祝儀｣
無から顕現させたとしか思えないほど唐突に差し出された5本の薔薇を受け取る。
白桃や杏、林檎のような果物を彷彿とさせる爽やかで若々しい香りが鼻腔を擽り、思わず抱きついた。
｢嬉しい〜圧紘さん好き｣
｢熱い抱擁とかおじさん照れるよ、照れちゃうよ？｣
慣れた手つきで抱きしめ返す姿はまるで年の離れた兄妹のようで、微笑ましさの影に意味深な闇が垣間見える。
｢黒霧さん、花瓶ってあるかな｣
｢生憎ですが、その薔薇に見合うような物はここに無く……｣
｢そっかあ｣
｢こういったものなら捨てるほどありますが……｣
いそいそとバックヤードから持ち出してきたのはトガ以外の成人男性達が飲み干した純吟辛口やシャトー・モン・ペラの空き瓶だった。
｢秀一さんたちが飲んだお酒のボトルとか無理！｣
｢無理ってなんだよ、辛口で超美味いんだぞ！｣
｢味の感想は聞いてな〜い！｣
棘が刺さらないよう指先で慎重に茎を持ち、意味もなく狭い室内を歩き回る。
｢そのままだと、花なんてすぐに枯れるのです｣
｢ね〜、折角なら長く飾りたいんだけどさ｣
幾重にも折り重なる花びらは、吸い込まれそうな真紅で心を奪われてしまいそうだった。
｢薔薇の適温って15〜25度くらいらしいぜ｣
｢だからお花屋さんは大きい冷蔵庫に入れてるのか〜｣
スピナーが操作する携帯を身を乗り出して覗き込み、勝手に画面をスクロールするAは頷きながら再度、薔薇の香りを嗜んだ。
｢決めた、ドライフラワーにする｣
｢どらいふらわー｣
｢カッサカサだ！ベトベトだろ？｣
死柄木とトゥワイスの言葉を流し息巻いて空き瓶に水を注いだ後、丁寧に薔薇を生けたA。
力強い文体で獺祭と書かれた一升瓶と可憐に咲き誇る薔薇は驚くほど不釣り合いだったが、A曰く「妥協の精神」らしい。
｢何日かしたらハンギングするんだ｣
｢はんぎんぐ？｣
｢うん、リボンとかで束ねて逆さまにして、風通しの良い所に吊して乾燥させるの｣
｢へえ｣
さほど興味の無い中、薔薇の話題を続ける死柄木も、相当Aを気に入っているのだろう。
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乃愛(プロフ) - ほんとうに、すきです... (2021年10月3日 1時) (
レス) @page28 id: 78a106acd8 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - もう好きです！あづまさんの小説！これからも読ませてください！ (2021年9月27日 6時) (レス) @page23 id: 30b611b787 (このIDを非表示/違反報告)
きりん(プロフ) - すごい主人公の危うさが綺麗に表現されていて好きです！(語彙力なくてすみません) (2021年9月22日 18時) (レス) @page16 id: 7259fb1aa4 (このIDを非表示/違反報告)
御堂(プロフ) - 初めまして。こういった敵連合のお話すごく好きなので嬉しいです、前作から見ていて言葉の表現とかタイトルとか凄く綺麗で読みやすいな~と思いコメントさせて頂きました…！無理せず更新頑張ってください！楽しみに待っております◎ (2021年9月18日 13時) (レス) id: 45dbeb9083 (このIDを非表示/違反報告)
落魄 - すみません、誤字がひどいですね。最後の分はあづまさんがいいならコメントしたいのですが大丈夫でしょうか？と打とうとしたものです。支離滅裂な文章ですみません。 (2021年9月18日 11時) (レス) id: 03af4fb6da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あづま | 作成日時：2021年9月18日 1時
