第36話：枯れる冬と共に君へ贈る言葉 ページ36
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｢それじゃあ、また｣
｢……うん。ばいばい、ホークスさん｣
少し畏まった態度で笑うAは、荼毘の腕を取りながらホークスとは反対の方向に歩き出す。
まるでお互いの進む道が分岐することを暗示するように。
｢Aさん……ッ｣
今日一日、何かが変だった。
言葉に出来ない不安と焦りが羽先を伝う。
振り返ると2人の姿は既に無く、繁華街の煌びやかな街の光と泡の様にゆっくりと動く人混みが闇へ潜るAを隠した。
一方、出奔と目眩しに長けている荼毘とAは人目のつかない経路で群訝山荘へ向かっていた。
｢“個性”使えや。すぐ戻れンだろ｣
｢あはは、発動条件知ってるくせに｣
｢……｣
街灯のない帰り道、熱の篭もる荼毘の手のひらを優しく握るAは、困ったように目を細めながら立ち止まった。
｢僕の“テレポート”はね、黒霧さんみたいに万能ではないんだ｣
繋いだ手に縋るような所作で荼毘の指を絡ませ、ゆっくりと彼の首元へ顔を埋めたAは今にも途切れそうな声で呟く。
｢この“個性”は俺を……『Aを1番に愛してくれている人』の元に飛ぶんだ。君の心拍数に依存するから、動揺してたり戦闘中だったりすると発動しないしね｣
｢……は、笑える｣
｢うん、笑っちゃうくらい僕は荼毘くんが大切だよ」
紡がれる吐息は甘く、くすぐったい。
少し力を加えたら壊れてしまうような脆く儚いAの細い腰に手を回す。
｢喧嘩した時は弔くんや連合の誰かに飛ぶこともあったけど……誰よりも私を愛してくれてたのは荼毘くんだったんだ｣
あぁ、脆く儚い身体は果たしてどちらの方だろうか。
今にも崩れ落ちてしまいそうな皮膚の継ぎ目から漏れる蒼炎が感情を代弁するように、夜道の中でひゅるりと揺らぐ。
｢……どうか、荼毘くんが幸せになれますように｣
｢A、お前、何して___｣
｢帰ろう。みんな待ってる｣
＊＊＊
聴覚の優れたトガが、いち早く足音のする方へ目を向けた。
｢あ！帰ってきました、2人共！｣
｢どこ行ってたンだよ？全部お見通しだぜ！？｣
｢えへ、ごめんね｣
慣れ親しんだ在り処に安心したのか、柔らかに笑うAを愛おしそうに抱きしめながらトガが問いかける。
｢一体何をしてたんですか? 心配したのです｣
｢……荼毘くんとデート、かな｣
｢えーずるい！トガもしたいです、Aちゃんとデート！｣
｢ん、今度ね｣
その言葉を適当にあしらったAは手早く寝支度を調え、自室に戻ってしまった。
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乃愛(プロフ) - ほんとうに、すきです... (2021年10月3日 1時) (
レス) @page28 id: 78a106acd8 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - もう好きです！あづまさんの小説！これからも読ませてください！ (2021年9月27日 6時) (レス) @page23 id: 30b611b787 (このIDを非表示/違反報告)
きりん(プロフ) - すごい主人公の危うさが綺麗に表現されていて好きです！(語彙力なくてすみません) (2021年9月22日 18時) (レス) @page16 id: 7259fb1aa4 (このIDを非表示/違反報告)
御堂(プロフ) - 初めまして。こういった敵連合のお話すごく好きなので嬉しいです、前作から見ていて言葉の表現とかタイトルとか凄く綺麗で読みやすいな~と思いコメントさせて頂きました…！無理せず更新頑張ってください！楽しみに待っております◎ (2021年9月18日 13時) (レス) id: 45dbeb9083 (このIDを非表示/違反報告)
落魄 - すみません、誤字がひどいですね。最後の分はあづまさんがいいならコメントしたいのですが大丈夫でしょうか？と打とうとしたものです。支離滅裂な文章ですみません。 (2021年9月18日 11時) (レス) id: 03af4fb6da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あづま | 作成日時：2021年9月18日 1時
