第15話：にんげん体操第一 ページ15
_
数日後、何事も無かったようにAは普段通りスイーツを買っては連合に振舞っていた。
｢義爛から斡旋される時点でオモテの人間でないことくらい承知の上だったさ｣
死柄木はレモンチーズケーキの包装を剥がし、無表情で咀嚼する。
｢弔くん、美味しい？｣
｢……ん｣
2つ目に手を伸ばすのを見る限り、お気に召したのだろう。
｢本当に行くの、死穢八斎會の所｣
｢あぁ。あと10分もしないうちに出る｣
そっか、と半ば諦めたように肯定したAは、外出の準備を始めた死柄木の後ろに立ち、彼の背中に真っ黒なロングコートを宛てがった。
｢これ着ていきな〜、夜は結構寒くなるよ｣
｢そんな遅くならない｣
｢……内ポケットに例のアレ、入れておいたからね｣
｢お前、気ィ利くな｣
Aは当たり前でしょ〜、と不敵に笑った。
その姿に死柄木も思わず口角を上げる。
｢いーい？弔くん、交渉は“いかに相手を揺さぶるか”、だ。人心掌握することが大切だよ｣
｢わかってる｣
｢……マグ姉と圧紘さんの片腕の敵を討つんだ｣
死柄木の両肩を掴むAの目は、忌々しい感情を孕む様に瞳孔を燻らせる。
｢行ってくる｣
｢ん、気をつけて｣
“お父さん”と呼ばれる手を少しだけ避け、触れる程度のキスをした。
男の姿で過度なスキンシップをすると不機嫌になる死柄木だが、もはや慣れてしまったようだ。
＊＊＊
｢……トガちゃんと仁くん、無事かなぁ｣
｢ま、大丈夫だろ｣
｢私というプロイビートの存在を把握していないのが最高に馬鹿で愚図な癡鈍だね、死穢八斎會｣
｢口悪ィな〜A｣
｢今だけだよ｣
スピナーが運転するバンボディトラックの助手席にAは座る。
荷台部分には荼毘とコンプレス、車上から飛び降りた死柄木がサンドヒーロースナッチと交戦していた。
｢あ〜護送車横転アンド炎上。弔くんがオバホと何か話してる、一旦車停めて｣
｢すぐ応援部隊が向かってくるぞ｣
｢その時は急かそう｣
コンプレスと死柄木が、オーバーホールの両腕を破壊する姿がサイドミラーから見える。
｢秀一さん、ささくれできてるね。ハンドクリーム貸そうか？｣
｢ンなこと言ってる場合かよ！？追っ手が来るぞ、早く乗れ！｣
クラクションを鳴らし、3人が乗り込んだのを確認した車は急加速する。
｢ふふ、今夜はパーティーだ、弔くん｣
｢ダージリンでも淹れてくれ｣
｢もちろん。シルバーニードルズをご馳走するよ｣
車内にはAの無邪気な笑い声が響いた。
_
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1195人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
乃愛(プロフ) - ほんとうに、すきです... (2021年10月3日 1時) (
レス) @page28 id: 78a106acd8 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - もう好きです！あづまさんの小説！これからも読ませてください！ (2021年9月27日 6時) (レス) @page23 id: 30b611b787 (このIDを非表示/違反報告)
きりん(プロフ) - すごい主人公の危うさが綺麗に表現されていて好きです！(語彙力なくてすみません) (2021年9月22日 18時) (レス) @page16 id: 7259fb1aa4 (このIDを非表示/違反報告)
御堂(プロフ) - 初めまして。こういった敵連合のお話すごく好きなので嬉しいです、前作から見ていて言葉の表現とかタイトルとか凄く綺麗で読みやすいな~と思いコメントさせて頂きました…！無理せず更新頑張ってください！楽しみに待っております◎ (2021年9月18日 13時) (レス) id: 45dbeb9083 (このIDを非表示/違反報告)
落魄 - すみません、誤字がひどいですね。最後の分はあづまさんがいいならコメントしたいのですが大丈夫でしょうか？と打とうとしたものです。支離滅裂な文章ですみません。 (2021年9月18日 11時) (レス) id: 03af4fb6da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あづま | 作成日時：2021年9月18日 1時
