【MHA】編入生は、何かおかしい。【男主】 (ページ12)

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少年が靄を抜けると見慣れた路地裏だった。

そこは十年近く慣れ親しんでいた薄暗さだが、つい数秒前まで眩い空間に居たためか、ぱちぱちと目を瞬かせている。

少年のあどけないその顔から少し下、腹の辺りへ緩く絡む華奢な白い腕。

？｢異異くん、お帰りなさい｣

｢トーラねぇね！ただいま！｣

彼を緩く抱くその人は、愛おしさを込めた瞳を向けふんわりと微笑む。

それへ応えるように満面の笑みを浮かべ、無邪気に勢いよく上を向く少年。

そこから少し離れたところでその光景を切り取ろうと物凄い勢いでスケッチする青年。

｢ティトにぃに、またおえかきしてるの？｣

ト｢そうなの。今日異異くんが帰ってきてくれて嬉しかったみたい。さっきなんて──｣

テ｢ちょ！トーラさん！？異異くんに言うのはなしですよ！！反則です！！！｣

何かを言おうとした彼女の言葉を慌てて遮り、大きな身振り手振りで主張する青年を見て少年が笑う。

彼ら3人にとって、久々の《日常》。

たわいもないそのやり取りが楽しく、心安らぐのだろう。

だから、であろうか。

少年を囲う2人の柔らかなその笑顔の奥に、二度と少年を奪われてなるものかという固い決意と連れ去った者達へのドロドロと濁った憎悪や殺意が押し込められていた。

無邪気に笑う少年は何も知らず、ただ、《日常》を享受するため彼らと手を繋ぎ路地裏の闇へ溶けていく。

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その日、幾日かぶりに路地裏に悲鳴が木霊し、一部が赤く────