【ⓓ！】少女漫画から転生しました、負けヒロインです。 (ページ18)

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『野良猫さーん！いるならにゃーんと返事して下さーい』

男性から貰った時計を覗くとあれから約1時間は経過している。
広場、広場の外れ、なんならこの国から出そうなほど探した。ある場所以外は。

『行くしかないかぁ...』

立ち入り禁止の看板をじっと見つめる。

『猛獣注意...』

仕方ない。引き受けた以上、責務を全うしなきゃ。

恐る恐る鎖をくぐり抜け中に入る。
中は獣道らしき細い道があり、緩く下っていくようにできていた。

何故か分からないが下っていったら殺される気がする。

嫌な予感が過ぎり、足が竦む。
でももしかしたら猫ちゃんがその猛獣に食べられていたとしたら...

『頑張れ私。勇気を出して。』

頬を2回叩いてからその細道へ足をつく。

やった。やってしまった。

入った片方の足を見つめ、入ってない片足を前に進める。
まだ少しの恐怖が私を襲う。
歩き方も忘れてしまいそうな程恐ろしい。

あまり無理せずゆっくり慎重に歩いていると後ろからがさがさという葉を掻き分けるような音。

『うわぁぁぁぁ！？』

何かわからないがとにかく焦って下り道を走って逃げた。

『はぁ...はぁ...』

死んだかと思った...
思わず焦って一気に下り坂を降りてしまった。
でもあれのおかげで一気に降りてこれた。
もしかして神様が勇気をくれる為にあの物音を！？

混乱からなのか現実逃避なのか脳はあの音を気の所為だと疑わない。

まずここら辺で呼びかけてみよう。

『よし...野良猫さーん！いたらにゃーと返事し...』

周りに呼びかけようと目の前、右、後ろと見回せば、
そこには看板で注意されていた猛獣。ライオンがいた。

こんな所にライオンとかいるか？いやいるとしてよくここに留まってるな。

そんな疑問と脳の処理が追いつかず目の前には猛獣がいるのに棒立ちする。

『幻覚だよね.....？』

勿論そうだよという言葉はかえってこない。
当たり前だけど少しは現実逃避をしたい。

ライオンがこちらに向かって走ってくる準備をした時、
死が目の前にあることを感じ取り足の力が抜ける。

少女漫画ならこんな時王子様が助けてくれるのに。

ライオンが私を目掛けて走ってくる光景を目に焼き付けてから、私は目を閉じた。