前夜 ページ33
⠀
『あとは衣装の準備だけ…！』
単独を含む明日からの東京出張に向けて荷造り中。
所属してない劇場での単独にも関わらず、即完だったらしく、ずっとお世話になってるマネージャーさんや作家さんがすごいよ！と興奮した様子で声を掛けてくれた。
先輩にはちらほらと東京来れば〜なんてに声をかけられたり。
早くから東京で活躍したり、単身アメリカに乗り込むような同期もいるくらいだから抵抗があるわけじゃないけど。
気がかりなのは堂前さんとのことで。付き合った途端に離れ離れなんて向こうが冷めてしまうんじゃないかと心配になる。だからといって折角のチャンスを逃すようなことは絶対にしたくない。仕事か恋愛か。天秤にかけるようなモノじゃないって分かってるのに、ぐらぐらと気持ちが揺れ動く。
重苦しい気分になりながら、舞台衣装にアイロンがけしていると、スマホが鳴った。ディスプレイに表示された『堂前さん』の文字を見て少しだけ明るい気持ちになりつつ、スマホを手に取る。
『もしもし！』
「あ〜もしもし、何してたん？」
『泊まりの準備です、しばらくは東京でお仕事なんで。もうこのまま大阪帰ってこれなかったらどうしましょ笑』
このまま東京での仕事が重なって、だんだん大阪の出番が減っていって、東京所属に。ネガティブな思考に引っ張られるのは昔からの悪い癖だけど、芸人としてはそれがベストなんじゃないかとも思う。そう芸人としては。
「ん？迎えに行くから大丈夫やで？」
『いやそうじゃなくて、え？迎え？』
「そう、お迎え。こっち戻ってくる日に新大阪まで迎えに行くよって。」
『わざわざ良いですそんなん！！』
私としては東京進出して離れ離れになったらどうなるんやろうって不安から溢れた言葉だったのに、堂前さんは当たり前のように私との未来を考えてくれている。
「それくらいさせてよ、彼氏なんやから」
「帰ってきたらどっか遊びに行こうか」
『行きます！！』
「いっぱいデートしよ。」
『します！！！！』
「元気やなぁ笑」
付き合う前から変わらない優しくて穏やかな空気感と恋人らしい甘い雰囲気が混じっているような会話はまだ慣れなくて照れてしまうけど、それ以上に楽しくて、嬉しくて。きっとこの人となら距離なんて関係なく、無理せずに一緒にいれるんだろうなと思わせてくれる。
『単独、頑張ってくるんで、帰ったらいっぱい甘やかしてくださいね』
「任せといて」
⠀
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 504人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねる(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます。心待ちにしていたと言っていただけてすごく嬉しいです。皆様のリクエストを踏まえた続編にできるよう頑張りますね！ (2022年6月22日 17時) (
レス) id: b46a5649b3 (このIDを非表示/違反報告)
ねる(プロフ) - りまさん» コメントありがとうございます。続編も考えてみますね！ (2022年6月22日 17時) (レス) id: b46a5649b3 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - はじめまして。毎回の更新を心待ちにするほどこの作品を読むのが楽しくて大好きだったので完結記念にコメントさせていただきました。結婚後ストーリーも作者様の無理のないペースの中で是非読んでみたいです！ (2022年6月21日 22時) (レス) @page50 id: ce4acb1eb6 (このIDを非表示/違反報告)
りま(プロフ) - 終わってしまうのがさびしいです。結婚後のお話も楽しみにしています (2022年6月21日 19時) (レス) @page50 id: 05beb7e26c (このIDを非表示/違反報告)
ねる(プロフ) - みーんさん» コメントありがとうございます。楽しみと言っていただけて嬉しいです。期待に添えるように頑張りますね！ (2022年6月14日 18時) (レス) id: b46a5649b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねる | 作成日時：2022年3月23日 19時
