どうして？ ページ7
『ヒチョル･･･手を出して･･･？』
『手？』
不思議そうに、ヒチョルが手の平を差し出した。
Aは、その上に鍵を置くと
『もし･･･大丈夫だったら、待ってて欲しいの･･･。』
一瞬驚いたように眉を上げたヒチョルを見て、ふわりと微笑んだ。
『話したい事があるの･･･。』
『･･･あぁ･･･。
分かった･･･待ってる･･･。』
小さく頷いたヒチョルを見て、Aはハンの後を付いてその場から離れた。
2人で、小さなAの後ろ姿を見送る。
キュヒョンは、ヒチョルをチラッと横目で見た。
心配そうに、まだAを見ている。
キュヒョンは、戸惑いがちに話し掛けた。
『あの･･･ヒチョリヒョン･･･？』
『あ？』
気のないような返事をしながら、ヒチョルが椅子に腰掛け足を組んだ。
『あの、なんで･･･Aさん･･･だったんですか･･･？』
『はぁ？』
ヒチョルが、意味が分からないとでも言うようにキュヒョンの顔を見上げた。
『･･･だって、普通なら･･･真っ先にヒョンが心配しなきゃいけないのは･･･ソユじゃないんですか･･･？
お腹に赤ちゃんもいるし。
第一･･･階段から、落とされたのはソユで･･･』
『おい。』
ヒチョルの声色が、低く静かなものに変わった。
途端、キュヒョンが口をつぐんだ。
『お前･･･今、落とされたって言ったな？』
『え･･･』
『言ったよな？』
キュヒョンが、怯えたように小さく頷いた。
『どうしてそう思った？』
黙ったまま俯いたキュヒョンに、ヒチョルは小さくため息をつく。
『黙ってたままじゃ、分かんねぇだろ。』
『･･･すみ･･･ません･･･。』
謝っただけのキュヒョンから、視線を外す。
『お前･･･まさかとは思うけど･･･ヌナになんか言ってねぇだろうな？』
遠くを見ていても、キュヒョンが小さく反応したのを、見逃さなかった。
『何言った。』
『･･･あの･･･な･･･何･･･』
ゴクリと喉を鳴らしたきり、キュヒョンの口から次に続く言葉が出てこない。
ヒチョルが、いつになく冷静で怖かった。
『どうなんだよ。』
『･･･あ･･･い･･･言いました･･･。』
『何て？』
『･･･も･･･もしかして･･･ソユの事って･･･。』
やっとの思いでそう言った瞬間、ヒチョルが立ち上がってキュヒョンの胸倉を掴んだ。
間近に見るヒチョルの整った顔。
その瞳は、射るように強いものだった。
キュヒョンは、小さく息を吸った。
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作者名：希愛 | 作成日時：2014年6月29日 0時
