取らないで ページ1
こんなに可愛い女の子が、ヒチョルの彼女なんだって･･･。
華やかで、可愛らしくて、手足もとっても長い･･･｢お人形さんみたい｣とは、こういう子の事を言うのね。
ヒチョルと、とってもお似合い。
こんな所にまで、わざわざ挨拶に来てくれたんだって。
嬉しい事ね･･･。
･･･あぁ･･･そっかぁ。
ヒチョルは、お父さんになるのね。
新しい家族が出来るんだ。
幸せになって欲しいわね･･･。
大切な、大切な私の弟。
喜ばしい事ね･･･。
＊＊＊＊＊＊
どこかぼんやりと、虚ろな瞳でそんな事を思っていたAの唇が、開きかけた所で止まった。
おめでとうと言うつもりだったはずなのに、言葉が出てこない。
(･･･新しい家族･･･。
･･･お腹の･･･赤ちゃん･･･。
ヒチョルの･･･赤ちゃん･･･？)
『･･･Aさん？』
方針状態になっていたAが、その声で我に返った。
気付けば、怪訝そうに眉を寄せるソユの顔が身近に迫っていた。
Aが小さく笑った。
『あ･･･ごめんなさい･･･。なんでもないの･･･。』
そう言ったAの顔を、ソユは無表情でジッと見つめたと思うと
『･･･オッパの事･･･取らないで下さい･･･。』
『はい･･･？』
『私から･･･オッパの事を取らないで･･･。』
『あの･･･ソユさ･･･』
『･･･オッパの事、好きですか？』
『え･･･？』
『Aさんは、オッパの事好きなんですか？』
『あの･･･なに言って･･･』
『私はっ！』
突然、ソユが大きな声を出した。
気付けば、その瞳に水っぽいものが、みちみちとしている。
Aは、困惑したようにソユを見た。
『私は、ずっとずっと大好きだった。
やっと･･･彼女になれたって･･･そうなれたって思ったのに･･･。
なのに･･･急に、もう妹にしか見れないって･･･そんなバカな話ない･･･。』
そう呟くように言うとソユは、下唇を噛み締めた。
『貴女なんでしょ･･･？』
『え･･･？』
『貴女が･･･Aさんが、現れたからオッパは･･･』
『待って！』
Aが、ソユの言葉を止めた。
『貴女たち結婚･･･するのよね？
私が現れたって･･･何？
私とヒチョルは、ずっと昔から･･･』
『･･･良いんです。
そんな事、聞きたいんじゃないの。
今日は、私がどれだけオッパを好きか、見てもらいたいだけだから･･･。』
そう言ってソユは、何処か遠くを見ながら冷たく笑った。
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作者名：希愛 | 作成日時：2014年6月29日 0時
