序章 ページ2
月の光が煌々と闇夜を照らす中、
美しい笛の音を奏でる人影があった。
源博雅である。
笛の音でさえ、溶け入りそうな月夜。
この男はうっとりとした顔で暫く吹いていたが、ふっと笛から口を離した。
博雅「む……。」
何やら近づいてくる。それもぞろぞろと。
『博雅様………、博雅様…………。』
自分の名を呼ぶのである。
博雅「何やつ……。姿をみせよ。」
『嗚呼、博雅様。貴方様は我等のこのあさましき姿を見せよと仰るのですか。』
人ではない。そう感じる声である。
まさか、百鬼夜行ではあるまいか。
腰の刀を少しだけ抜いた。
すると、
『刀をしまってくださいませ、博雅様。私共は貴方様にお願い申し上げるために参ったのでございます…。』
博雅「願い、だと?」
『はい。古来から、我等の仲間であり、ある者には良き敵でもあり、ある者には恩人でもある御方の魂が…危のうございます。霊力というものでその御方の傷が癒されるのであります。晴明殿の所へ参ったのですが、結界が張られており、我等のような物の怪は入ることができないのでございます……。』
そう言って物の怪共はおんおんと泣いた。
悲しそうな、悲痛な声であった。
それに、
心優しい博雅は放っておくことができず、
博雅「わかった。其の者を預かろうではないか。そして俺が晴明のところへ持って行こう。」
その言葉に物の怪共はより一層声をあげて泣いた。
『なんと、心の優しいお方だ…。
A殿をよろしく頼みますぞ…。』
そう言われ、トンッと前の地に置かれたのは
刀であった。
拾い上げ、本体を見てみると傷だらけで今にも折れそうだった。でも生きてるかのように微かに温もりがあった。
『もう一つだけ、お願いがございます。
もし、目の覚ますことができたならば………。
その御方が行かなければならぬ道へと導いてやってくださいまし。』
博雅「わかった。」
『嗚呼、なんと御礼を申し上げれば良いか…。よろしく頼みますぞ……。』
そう言い残すと物の怪共の気配はだんだんと薄くなっていった。
…………。
気づけば全てが元に戻っていた。
煌々と照る月光の中、自分は笛を吹いていた。
腰には刀が二つ。
博雅「今夜あたりにでも、晴明の所へ行こうかな…。」
物の怪共が自分に託した刀に壊さぬよう、触れながら博雅は呟いた。
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椿(プロフ) - ろくがつさん» コメントありがとうございます!!私も陰陽師大好きです(≧∀≦)更新、頑張ります! (2019年3月24日 0時) (レス) id: 3f1767c2e3 (このIDを非表示/違反報告)
ろくがつ(プロフ) - 陰陽師!私の大好きな本です!これからも更新楽しみにしてます! (2019年3月23日 22時) (レス) id: 803b40573c (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - もコもコさん» リクエスト承りました!! (2019年3月20日 10時) (レス) id: 3f1767c2e3 (このIDを非表示/違反報告)
もコもコ(プロフ) - 三日月さんお願いします!! (2019年3月20日 8時) (レス) id: cf4a1ad378 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - キャラ大将さん» もちろん、おkです!!! (2019年3月20日 0時) (レス) id: 3f1767c2e3 (このIDを非表示/違反報告)
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