最終話 鬼籍に入る ページ49
「A!」
誰かが手を伸ばし、彼女の腕を掴み上げ後ろに引き戻される。
「やっと捕まえた…」
『…何で…?』
そこにいたのはここにいるはずのない、夏油だった。驚いているAを他所に、ギュッと抱きしめる。
「もう…、離さない。Aを1人にしないから」
彼の存在は、Aにとって「孤独」の世界を生きるただ一つの"光"になっていて。その"光"は彼女の荒んだ心に優しさをもたらし、どんなに暗い闇の底でも彼の声は届いていて―…。
「A」
そっと身体の向きを変えられ、2人の視線が交差する。
地獄にいるはずなのに、気づけば2人がいる所を中心に、周囲に変化をもたらす。
「愛してる」
好きなんて言葉じゃ、彼女には伝わらない。抱きしめる両腕から溢れ出す彼女への想い。
そしてAも彼の耳元で囁く。
『…知っていたよ、ずっと前から』
繋がれたその手を、もう二度と離さない。
そしてようやく彼女は―…「人」となり、「孤独」という呪縛から解き放たれたのだった。
Fin
【
…直接的に「死ぬ」「死亡する」というのを避けるため、遠回しに表現する慣用句の一つ。
改変された世界には、「久禮田 A」の名は残らずとも、
死後の世界において、閻魔帳(鬼籍)に彼女の軌跡(生きた証)が刻まれる。
――最愛の姉・睦月を生かす為に、Aは何度でも「死」を繰り返す。
【君のために、(私は)死ぬ】
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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時