君が為、鬼籍に入る３【呪術廻戦】 (ページ48)

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141. 死後の世界ページ48

―地獄―

瞼を上げるとそこに広がるのは、灼熱地獄。空は薄暗く暗黒。天からともなく地からも沸き起こる阿鼻叫喚。手足を失い、床は大量の真っ赤な血で染まり、同時に溶岩が溢れかえりその場を支配していた。

『…まぁ、当然だよね』

この場にいることに対し、A自身は意外にも冷静で。

世界の理を変え、1000年以上前から術師の家系としていた、久禮田家の存在そのものを消滅させた。それにより、必然的に睦月とAの存在も消滅するはずが、この先の未来を生きてもらいたいが故、睦月の存在を消すことなく、一方で双子の妹であるAの存在を消すに至った。

『…どこへ行っても、1人なんだなぁ』

本当は、1人になるのがとても嫌で、誰よりも｢孤独｣を恐れていて。
不安や苦しみといった感情を表に出せず、1人でいることを平気なふりをして。

だけど自分は｢呪い｣だから…、｢人｣と一緒にいることは叶わない。だから、｢人｣と共にいることも、慣れ親しむことも…、何もかも諦めていた。

物心ついた時には、既に地下牢での生活を余儀なくされていて。陽のない世界が日常だった。血濡れた世界が、全てだった。

血生臭い世界を生きることを余儀なくされ、呪物の受肉を強いられて。
本当はずっと、人のぬくもりを求めていたのかもしれない。
誰かに縋りつきたい、誰かに甘えてみたい。そう昔からずっと…憧れていた。

だから、夏油に告白された時。内心嬉しかった。
初めて自分を求めてくれる存在に出会えたのだから。

だけど彼の想いを振り切ってまで、1人になることを選んだ。本心に素直になれない自分を何よりも憎んだ。

『…なんだよ、今になって…、恋焦がれるなんて』

地獄の入口を前にして、その足元に広がる世界に、足がすくんだ。
このまま身を投げ出せば、永遠の｢死｣を迎えられる。死後絶えることのない極限の苦しみを受けることになるだろう。それでもいい…、｢孤独｣の苦しみに比べれば容易いものだ。

このまま楽になりたい…、だけど―…

『…誰か、助けて…』

誰かを求める呟きも空しく、地底へと堕とされる。