136. 一度失って尚、もう一度失う ページ43
圧倒的な実力を前に、なす術のない二階堂と福田。
だが殺すようなことはせずに、戦闘不能まで追い込む。
『…それでも1級呪術師かい?』
「…くっ…」
『まぁ最期に、君達と会えてよかったよ』
「…っ?」
その時、突然2人の頭の中に、ある一部の記憶が蘇る。
〈…9年ぶりだね…、弥生〉
〈!!…、まさか―…?〉
〈こちらの方が…、二階堂さんがおっしゃってた久禮田 Aさんですか?〉
それは2015年頃にAが研究所から脱獄した時に、再会した頃の記憶。勿論、2人には身に覚えのない記憶でありながら、何故かとても懐かしく感じていた。
「(…!!…A…?…、まさか―…、この人は…)」
『…?記憶が一時的に戻ったか』
だがAにはその2人の様子は想定内であり、驚く様子もなく。
『…そのまま永久的に―…記憶を消させてもらうよ』
「な…何故だ…、A…!」
『――今まで、世話になった。ありがとう』
二階堂の言葉を他所に、Aは両手を合わせる。パンッという音と共に、二階堂と福田は意識を失った。
そして―…、一時的に取り戻した記憶は、二度と蘇ることなく永遠に消滅することになったのだった。その場に倒れこんだ2人を、車の近くまで運ぶ。
『…あとは、睦月達だけかな』
今回二階堂達と接触したのは、記憶改変による異変が起きてないかの確認の為。だが相当強力な「呪い」であったこともあり、Aとしては十分すぎた。
そして―…、わざと一時的に記憶が戻ったような作用を起こし、一度失った者を取り戻し、また失う。その残酷さを分かっていて…、それでも尚、容赦なく切り捨てるのだった。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時