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121. 歪んだ狂気 ページ28

呪力が圧倒的に強い所に向かうと、そこでは丁度Aさんが最後の1体を仕留めたところだった。それだけでなく、彼女の足元には呪詛師の死体も転がっている。当の本人は気にする様子はなく、足元に転がっている死体を踏みつけて歩いていた。


「…Aさん」

『?…、あぁ、そちらも終わりましたか』


彼女は私の存在に気づき、こちらを向く。怪我をした様子はなく、更に不自然なくらいに服が一切汚れていないのに、彼女の足元には血の海が広がっている。


「…呪詛師もいたんですか」

『まぁ…、例の呪詛師絡みの集団ですけどね』

「…まさか、」

『と言っても、奴はこの場にいないよ。連中は私を追ってここまでやってきたんでしょうが』

私自身、生かすという選択肢はないから、相手が誰であろうと殺すけどね。と彼女は笑って言う。だけどその狂気じみた素顔に、私は言葉を発することができなかった。


彼女の足元に広がっているのは、「人」としての形が一切残っておらず、捥ぎ取られた手足や首、露出した内臓物などが転がっている。
だけどどうやら呪術で殺害した様子はなく、更に彼女の使役呪霊によるものでもない。彼女の手に武器らしいものはなく、これら全てを―…、彼女は素手で殺害したとでもいうのか。呪霊さえも。
Aさんは私の様子に気にも留めず、転がる血肉を踏みつける。


『そちらはどうでした?』

「雑魚級しかいませんでした」

『そう、よかったですね』


そう言いながら、Aさんはまだ何か気になるのか、転がっている死体に触れ、物色する。そして血に染まったカードらしきものを手に取ると、袖口でその血を拭い取り、じっと見つめた。


「…?どうかしましたか?」

『…いや、何でもない』


特に私に伝えることはせず、その手に持ったカードを呪力で燃やした。それだけでなく、呪霊をその場に召喚したかと思えば、呪霊たちにその死体の処理を指示する。血肉や骨を嚙み砕き、咀嚼する音だけが響き、彼女は私を連れて外に出た。


『予定より早く終わりましたね』

「……」


随分と暢気なトーンで話しているが、彼女がやったことは人殺しと大差ない。呪術で殺すとは異なり、手に血肉を割いた感触が残るのでは、感じ方が大きく異なる。

122. 「人」の侵入を拒絶する"帳"→←120. 標的となる立場



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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時

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