120. 標的となる立場 ページ27
『…本当、分かれて正解だ』
Aの前には、呪詛師数名と1級呪霊が複数体確認できる。
「東側には別の術師が行ったか。あっちは雑魚しかいねぇよ」
『それを分かった上でこちらを選んだのだが』
Aは呪詛師の言葉を小馬鹿にしながら、言葉を返す。その態度に呪詛師達は苛立ちを露にするが、当の本人は気にしない。
『…で?何の用?』
「アンタが久禮田 Aだな?…神無月様がアンタを手中に収めようと、探っている」
「数日前の京都において、夏油傑が放った呪霊を全て祓ったと聞く」
神無月―…、その名を聞くや否や、Aは相手を睨みつける。
その男の名こそ、双子の姉妹を幾度となく襲撃している呪詛師である。そしてAにとっては、宿敵ともいえる相手。
『…だったら何?』
「あの御方にアンタを引き渡す」
『…どうぞご勝手に。まぁ…、君達凡人が相手になるとは到底思えないけど』
その言葉と共に、会話をしていた呪詛師の肉体が突然、呪霊の襲撃に遭う。なんの気配も音もたてずに起きた出来事に、傍にいた1級呪霊は勿論、他の呪詛師は目を見開いていた。
『何を恐れる必要がある?戦いに犠牲はつきものだろう』
最も、君達を殺すのに彼らが手を下すこともないけどね…、とAは仮面に手を掛ける。
「…き、貴様ァ!!」
さぁ…、血濡れの狂劇を始めるとしようか…、そう言って仮面を外した。
――
Aさんと別れてからというもの、東側にはほぼ雑魚呪霊しかいないことに気付く。そして西側に意識を向けると…、明らかに呪力量が多い。彼女はそれに気づいた上で、私を東側に回したのなら、何か良からぬことがあるのではないか、そう思えてならない。
「…一枚上手を取られましたね」
七海は一息つくと、早くここにいる呪霊を一掃し、彼女と合流した方がいい。それに彼女を狙う呪詛師の存在もある。可能性は低いとは言っていたが、それでも予測不能なことが起こりうることも否定できない。
呪霊は崩れながら消え去る。ここら一帯の呪霊は今ので気配がなくなった。残りの呪霊を探していると、西側の呪力がより強くなった。彼女がいるであろう方角だ。
「くそっ…」
私は急ぎ、Aさんのいる西側へと向かう。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時