96. 交渉条件 ページ3
着地するや否や、突然その場に現れた呪詛師に、呪術師達は警戒を強めるも、Aは気にすることなくその建物へと入っていく。
そして至る所にいる負傷者を一通り見まわして、鼻で笑った。
『さーて…、交渉といきますか』
「…交渉、だと?」
そこに高専関係者の幹部の人間がAの前に現れた。七海はずっとAの後ろに控えている。
『簡単だよ。君達呪術高専は私との"契約"を破棄した。それに伴う対価を支払うのは当然だろう?』
「……対価とは?」
『京都にいる呪術師全員の生命』
「「!!」」
フッと笑いながらも、決してその言葉が冗談ではないのは彼女の言動からも一目瞭然で。いつの間にか、負傷者の近くには彼女が召喚した呪霊が控えており、寝首を狙っていた。
「…殺す、というのか?」
『たかが京都にいる呪術師100人の命を取ったところで、私が死んだ回数に比べりゃ大した支障もないだろう?』
「(…死んだ、回数?)」
「呪詛師のお前の言葉なんぞ―…」
『あ、そう。なら―…』
そう言ってAはおもむろに手を上げた。次の瞬間―…
「ギャアアア!!」
「ぁあ"あ"あ!!」
「「!!」」
呪霊達が一斉に負傷者に襲い掛かり、その場に断末魔が響き渡る。それだけでなく、その場で治療を手伝いしていた補助監督などにも容赦なく襲い掛かったのだ。七海もあまりに突然のことに反応が遅れるも、その呪霊を祓おうとする。しかし、それをある人物が止めた。それにより彼はその場から動くことが出来なかった。
『残念、交渉決裂だね』
「…ま、待ってくれ!!話を聞く!!」
『だってさ』
再び手を上げると、呪霊達の動きは止まった。だけどその場には致命傷を患い虫の息になっている負傷者が大勢いた。先ほどまでいた数よりも明らかに増えている。
「…条件はなんだ?」
『外にいる呪霊は全て私が引き受ける』
「……は?」
想定外の条件に誰もが呆気にとられる。夏油一派であるはずの呪詛師が、呪術師側の味方に付くだと?
『ただしこれは、準1級呪術師 久禮田 睦月に免じてだ。そうでなければ、高専の連中に手を貸すなどまずしないし、「人」が滅びようがどうでもいい』
淡々と言うが、誰もが反論しようにも負傷者のみならず、この場にいる全員の命が天秤にかけられているため、誰も言葉を発しなかった。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時