108. 目覚め ページ15
目が覚めた時、そこは見覚えのない場所で。だからといってどこかの病室でもなければ、どこかのホテルでもない。全く見覚えのない天井にAは首を傾げた。
そしてふと、耳慣れない生活音が聞こえ、誰かの家にいることに気付く。
『…?』
時間を確認しようにも、手元にスマホや時計がなく。さらにこの家の主が、わざわざ着替えまでさせたようで。見慣れない服を着ていることに驚いた。
すると、ガチャッと扉が開く音がして、金髪の男の人が部屋に入ってきた。
「…!目が覚めましたか」
『?』
Aは状況が全く呑み込めず、終始疑問符が浮いていた。
「…私の事、分かりますか?」
『……睦月の後輩だった、七海君』
「記憶は正常のようですね」
『あれからどのくらい経ったんですか?』
「今日は12月28日です。時間としては…、朝の8時ですね」
七海はスマホで時間を確認しながら言うと、Aは上位を起こす。
「お腹空いていませんか?」
『…?何故?』
「何故って…、4日間眠っていましたし、何か食べますか?」
『…特に何も。食べずとも外で調達すれば、腹は満たせる』
「…外?」
と聞き返されたことで、Aは『知らなくていいこともあるんだよ』と言って言葉を濁した。
「そのまま、起きますか?」
『あぁ…、流石にね。君にも悪いし』
呪詛師認定された奴を匿うなんて、随分とお人好しなのか分からないけど、目が覚めたことだし、君にこれ以上迷惑をかけるつもりはない。と言ってベッドからスルッと下り立ち上がる。
4日間眠っていたにもかかわらず、身体は鈍っていない様で、軽く体を動かしている。
「…どちらへ?」
『高専上層部の元に行くよ』
「!!」
『…どうせ身柄を上層部に引き渡されるなら、自らの意志で行けばいい』
そうすれば君達に迷惑かけることなく、済むだろう?とAは言う。しかし上層部に引き渡すつもりがなかった七海は、それを拒んだ。
「…なら引き止めます」
『……は?』
「私は貴女を上に売るつもりはありませんから」
予想の斜めを行く答えにAは呆気にとられている。
『いや、流石に君は関係―…』
「京都で二階堂さん達と共に行動した時点で、少なからず私にも疑いの目が向けられたと思っています。ですが、久禮田さんが殺害されたという事実に、些か疑問があります」
それがもし、久禮田家の姉妹と上層部が関わる深い確執であるならば、我々にも協力させていただきたい。そう七海は言った。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時