105. 匿う ページ12
「…まぁそこまで言うなら七海君に任せるよ。他の高専の連中より断然信用性があるし」
「……はい」
七海はベッドにもたれ掛かるように眠るAを、そっと抱き上げる。寝息はとても静かだが、それでも生きていることに変わりはない。
「そうそう。言い忘れていたけど、Aは常に「人の負の感情」を浴び続けているから、公共交通機関には乗れない。だから悪いけど東京までは、こちらが手配した車で向かってくれるかい?」
「?」
「あ、勿論運転手は俺の顔見知りで且つ、術師関係者だから。七海君はAの傍にいてくれればいいよ」
「…わかりました」
七海は二階堂の言葉に頷き、抱きかかえたままその部屋を後にした。
「…まーさか、七海君がねぇ」
「関わりがあったんですか?」
「いや、在籍中に会ったのは2回程度だったはずなんだけどね」
どういう風の吹き回しで、Aに興味を抱いたのか…、二階堂は興味津々だった。
――…
その後、七海は二階堂から紹介された運転手に、一旦Aを預けると、高専に立ち寄った。
Aによって京都市内に蔓延る呪霊は全て対峙されるも、彼女の功績が認められたわけではなく。どちらかというと、帳が解けた後の彼女の居所を探っているようだった。
勿論七海自身も、問い詰められたが、黙秘を貫いた。高専側とAとの間に、何らかの確執がある以上、情報を開示してはいけない…、そう考えた。
その後、七海は東京に入る五条にも連絡を入れる。
五条の声色はどこか疲れ切っていて。恐らく彼は―…、親友・夏油傑をその手で殺したのだろうと、そう察した。
「睦月さんの件は、二階堂さんから聞きましたか?」
〈あぁ、聞いた。…また、Aが助けたんだってな〉
二階堂から既に詳細の電話が回っていたようで、五条は深く息を吐いている。
〈…んで?七海がAを匿うんだって?〉
「そうですね…、目が覚めるまでですが」
〈その後は、そいつをどうするの?〉
その先のことは本人に一任している、と七海が答えると、五条は少しの間を置いて、口を開いた。
〈…Aが目を覚ましたら、11年前の事を聞き出そうと思う〉
「…?何故…」
〈傑が言ったんだ。僕たちはあの日の事を―…、何一つ見えていなかったと〉
どうやら五条は夏油に何か言われたらしい。その内容については東京に戻ってから、直接伝える…、というので七海はそれ以上のことを聞かなかった。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時