104. 蘇生 ページ11
―某所―
そこはある住宅の一室であり、部屋に入ると福田の姿があった。
「…こちらです。二階堂さんの指示通りに準備は終えています」
「…っ…」
ベッドに横たわるのは、心臓のみならず急所を複数箇所刺され絶命している睦月の姿があった。
その姿を見て二階堂と七海は絶句している。
だがAはどこか落ち着いた様子で、横たわる睦月の所まで行くと、既に死後硬直が始まり冷えてしまった彼女の身体に手を置いた。
『――睦月、今助けるから』
呪力を流し込むAを、二階堂達は後ろで見守る。すると、次第に傷口が塞がり更に彼女の身体を染め上げていた、赤い血が消えていくではないか。一方で、Aの口端から血が流れ出る。
この時二階堂達は初めて―…、転移術を目の当たりにする。それはあまりにも残酷すぎる光景でもあった。
『睦月しか、私の「呪い」を解くことが出来ない。君にしか―…私を殺せないんだよ』
「…!!」
七海はその彼女が呟いた言葉に耳を疑った。だけどどうやらその呟きを聞いていたのは、七海だけだったようで、二階堂達は気づいていなかった。
それから30分ほどで睦月は息を吹き返し、Aはベッドにもたれ掛かるように眠りについてしまった。Aの身体に転移された傷は、既に完治しており、彼女は疲労困憊による眠りだろうと、二階堂は判断した。
「…さてと、東京の方も大方終結したそうだし、戻るか」
「そうですね…。一先ず睦月さんを、京都高専の医務室に移送しましょう」
と今後の話をする二階堂と福田。七海は何も言わずにその場にとどまっていた。
「――Aについては、事前に話した通り東京に連れて行こう」
「!!…高専に身柄を引き渡すとでも?」
「それしかないだろう」
流石に俺と福田は今回の件で京都から離れられないし、睦月だって今の状態じゃ五条に迎えに来てもらわないと、いつまた狙われるか予測できない。夏油傑という、「人」を喪った以上、俺達にはどうすることもできないんだよ、と二階堂は言った。
「…だったら、私が彼女を匿います」
「…は?」
予想外の言葉に二階堂は驚いている。
「彼女が目覚めるまでの間だけでも、私の家で匿います。その後は本人に任せますが」
「いや、流石にそれは…。七海君の立場的にも問題がありそうだが」
と二階堂は言うが、彼は譲らない様で。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2022年2月5日 19時