3-15. 勝利と解放 ページ47
｢自由にしていただこう｣
目の前には死者の軍勢。戦いが終わった今、彼らはようやく眠りにつくことができる。
｢そなたの誓いは果たされた。逝け｣
まだ早いというギムリの声に少しだけ迷うように言葉を詰まらせたが、アラゴルンはゆっくりと死者にそう告げた。その言葉を聞いた彼らは表情を柔らかくして、Aへと視線を向ける。
｢……次はそなたが、解き放たれることを願おう｣
『……』
そして死者達は晴れやかな顔をして風の中へと溶けていった。
戦は勝利に終わった。
しかし戦場を振り返れば、そこには多くの同胞たちが地に伏せていた。
その中にはセオデン王の姿もあった。
近くにはエオウィンも倒れており、兄のエオメルの嘆く声が野に響き渡った。しかし彼女にはまだ息があった。エオウィンは魔王と戦いその手に傷を負って蝕まれていたが、その後王アラゴルンの治療で一命をとりとめた。
しかし、セオデン王は既に息を引き取っていた。
数えきれないほどの亡骸がある中で、Aはセオデン王の亡骸を見つける。
そして、そっと今はもう冷たくなっている頬に手を触れる。
『…結局、俺達は育てられた人間を見送ることしか出来ねぇな。まぁ…、感謝はしている』
少なからずエイリアスもアンタには感謝していた。先の未来がどうなろうと、俺は歩みを止めない。
この戦いを終えて、急速に爛れが進行していっているのが目に見えて分かる。
一時的に回復したのも束の間、やはりこの世界に光が差し込んできている以上、進行は止められない。
フロドが指輪を葬らない限り、この苦しみから解放されることはない。
『…最後の戦いが始まる。遂に―…だな』
そしてAはゆっくりと立ち上がり、その場を後にした。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年3月13日 18時
