3-13. 死の世界 ページ42
｢これが入口か｣
たどり着いた場所はまるで死の世界への入口だった。
中を窺うことはできないほど、暗闇で覆いつくされ、熱い血潮までもが凍り付くような、そんな雰囲気を醸し出しているそこはとても不気味なもので、馬達も酷く怯えていた。
｢道が閉じている｣
レゴラスが言った。死者は生者の侵入を拒んでいるのだ。
『……』
ジッとAは扉を見つめると、入口から何かの呻き声とともに風が吹き抜けた。
暗く冷たい全身を凍てつかせるような風に、驚いた馬達は一目散に逃げだし、なす術もなく見送る。
進むしか道はない。
｢死者など恐れはしない｣
アラゴルンは自分を奮い立たせるように吐き捨て、暗く冷たい地へと足を踏み出していった。
｢こ、これは…！｣
中は外よりもさらに刺すような冷気に包まれていた。人の形をした靄が身体を這うように取り巻いてくる。Aは赤い瞳でそれを見つめると、その靄はAに近づくことはせず、離れていく。
足元には大量の骸骨が散らばり、歩くたびに音を響かせている。
気味の悪い感覚に足早でそこを抜ければ、次は広い空間へと出た。
『……来る』
そうAが呟いた瞬間、一行の目の前の空気が歪んだ。それと同時にAは自らの視界を布で覆った。
｢我が領地を侵せしは誰ぞ｣
そしてそこへ現れたのは、まさに死者の王だった。
｢汝が忠誠を誓った者だ｣
｢生者は死者の道に入ることは許されぬ｣
｢私には許される｣
アラゴルンの言葉に耳を傾ける気はないらしい。目の前の死者はさも可笑しそうに高らかに笑う。
その声に呼応するかのように次から次へと現れる死者たちは、あっという間に4人を取り囲んだ。
向けられるそれは、痛いほどの敵意。
｢この道は死者に作られ、死者によって守られている。道は閉ざされた。もはやここからは出られぬ。お前たちは死ななければならん｣
危険を感じてレゴラスが放った矢は体をすり抜け、当たることなく壁へとぶつかり、むなしく地面へと転がった。
『……待てよ』
｢貴様は、なんだ｣
Aが顔を上げ、アラゴルンの隣に立つ。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年3月13日 18時
