混血のエルフ３【指輪物語】 (ページ34)

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3-8. 賭けページ34

部屋に戻ったAは、一人鏡を見つめていた。
自身の朱い瞳が鏡に映る。

『…湧き出る力は何なのか』

魔法ではなく、別の力。それは体に纏い、傷口をも癒していく。焼けただれていたところは、いつの間にか完全に治癒されていた。

『…闇に堕ちた者が光の力を使えるはずがない―…』

だがどうみても、これは癒しの力―…光に属するものしか扱えないもの。

『まだ神はオレを見捨ててない―…か』

扉がノックされたのを耳にし、深呼吸してから扉に向かう。

『…アラゴルン？』

扉が開け離れたと同時に、強く抱きしめられる。

｢…いなくなったかと思った｣

存在を確かめるように、アラゴルンはAの頬に手を添える。

｢どこに行っていたんだ｣

『ガンダルフとピピンの見送りに…』

｢黙っていなくなるようなことはするな…、これ以上失いたくない｣

戦場ではいつ、どこで、人が死ぬかわからない。
そのような状況下で、彼は"失いたくない"と溢した。本心なのかもしれないが、Aは敢えて現実を突きつける。

『…何を戯言を。今は戦火真っただ中だ。失う事を恐れては前に進めないだろう？』

｢！！｣

『アンタが弱音を吐いてどうする。アンタが強くいなきゃ、民衆は誰を頼ればいいんだ』

Aもアラゴルンの片方の頬に手を添える。

『…アンタは次期王だ。皆を引っ張っていく王だろう？』

『……今生ける彼らの未来を勝ち取れよ』

死にかけのオレなんか気にしないで、民衆の手を取れ…と、Aは訴える。

限られた時間の中で生きなければならない彼にとって、未来より今を生きる事を優先にしていた。

｢なぜ君はこう…、強いんだ？｣

『俺は…アンタ等と違って強くねぇよ。弱くて、ズルいやつだ』

｢……｣

『甘え方も知らない、頼り方も知らない。レゴラスやアンタらを困らせ、心配させることしかできねぇ。今回の旅でそれを強く実感した。オレは…、初めからアンタらと一緒に居てはいけなかったんだって』

｢そんなことないだろう｣

『いや、そうなんだよ。オレと言う存在が、アンタ等を苦しめ、フロド達を危険にさらす』

Aは存在を否定し始める。
しかし、以前とは異なり錯乱している様子はなく、とても落ち着いた様子だった。ありのままの今を受け入れているかのようにも思えて仕方がなかった。