3-2. 白のサルマン ページ24
「姿を現せ」
アラゴルンが静まり返った塔に向かって呼びかけた。
Aは彼らより後ろに控えて、見上げていた。
「敗北してもサルマンは危険だ」
「とっとと片付けようぜ」
血の気盛んなギムリが斧を片手にうずうずして言った。
「早まるな。生かしておくのじゃ」
すかさず冷静なガンダルフがそれを押しとどめた。
「我々は彼と話す必要がある」
「殿は多くの戦で大勢の命が奪われ、その後、和睦を結んだ」
オルサンクの塔の最上階からぬっと白い衣をまとい、杖にすがったサルマンが姿を現した。
「サルマン!」
エオメルがローハン王家にとって全ての元凶である張本人を睨みつけた。
「わしらもかつてのように膝を突き合わせて話し合い、和平に至れぬものだろうか?」
サウロンは偽りの優しさを含んだ声で、地上に向かって呼びかけた。
「いいだろう、和平を打ち立てよう」
じっと考え込んでいたセオデンが結論を出した。
「あぁ、打ち立てようとも!!西の谷を焼き、女子供を殺したお前がその報いを受けたらな!!」
彼は殺人的な怒りに駆られて叫んだ。
「ヘルム城の門前で残骸を切り刻まれた兵士達の恨みが晴れた時にこそ、和平としようぞ」
「お前が首つり台に頭上高く吊し上げられたとき、和平を打ち立てよう」
「首つり台だと?何を言うか老いぼれめ!」
サルマンの顔が怒りに震える。
『…アンタ、変わんないな』
「!!」
サルマンがその声のする方を見ると、自分の背後にはAの姿があった。
地上の者達もいつのまに塔の上に移動していたのだと、目を見開く。
「A、貴様…!!」
サルマンにはここまでAを運んできた者が何なのかすぐに理解した。地上の者達からは見えないが、サルマンとAの視界には、空飛ぶ魔獣が映っていた。
『まぁ…そう言う俺もあの日から何も変わってないんだが?』
面白半分に言うAだが、目は全く笑っていない。
それに恐怖を覚えたサルマンは、地上を見下ろす。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年3月13日 18時