【過去編】19話 ｢決めたから｣ ページ50
｢A、大丈夫か？｣
『何が？』
｢最近痩せた｣
『いつも通り三食健康的な食事を心がけているんだけどね』
｢あと｣
Aの肩にもたれ掛かる男に消しかすを投げつけた。
｢それ、うざくない？｣
というのもここ最近、Aの傍には必ず五条がいる。べったりと五条が傍にいる。
本人は全く気にならない様子で、適当にあしらっているようだが、傍から見ていても変だ。
『…あぁ、これ？』
最近、Aは怪我をして帰ってくることが増え、更に3級であるにもかかわらず、単独任務を任されるようになっていた。何か理由があると、夜蛾先生は言っていたが、本人は何も語らない。
｢五条、心配なのはわかるけど近づきすぎだ、離れろ｣
｢何の事だか｣
｢その顔、うぜーな｣
私を煽ってんのか、はたまた無意識なのか。
恐らく後者だということは分かっているので何も言わない。
｢…A、コイツと夏油、チェンジするか？｣
五条も夏油もクズだけど、間違いなく夏油の方が常識人だ。…その距離、心配しかない。
｢チェンジ料金かかりますけどー｣
｢チェンジ料金ってなんだよ｣
意図せずため息が零れる。
｢…五条がうぜーから行くわ｣
煙草も吸いたいし、そう付け足して腰を上げると、
『硝子』
｢ん？｣
『ありがとう、心配してくれて』
突拍子もない言葉に私は呆気にとられる。
『私は大丈夫だよ』
そして進級してから、口癖のようにその言葉を口にするようになっているAに、私は嫌な予感がした。Aのその目は何処か、私ではなくその先を見据えているようにも思えたからだ。
｢…A？｣
『もう、決めたから』
いつになく笑顔になるAに、私は困惑しつつもAに近づき、耳元に口を寄せる。
｢…五条がいれば大丈夫だと思うけど。もしなんかあったら連絡しろ。夏油とすぐに行く｣
その言葉にAは頷いていた。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年3月8日 0時
