【過去編】17話 帰り道 ページ48
ガキ2人は補助監督に任せ、俺はAを背負って高専に向かう。
｢最近、お前のこと背負ってばっかだな、俺｣
『……ごめん』
｢今度メシ奢りな｣
『…うん』
｢……｣
あまりにも弱々しい返事に調子が狂う。
｢寒いな｣
『……そうだね』
｢つーかお前、痩せた？この前よりすごい軽くなってんだけど｣
『…どうだろ』
それ以上会話は続かなくて、背中に体温を感じながら歩く道は、普段より寒く感じた。
｢…なぁ｣
『…なに？』
｢……何があった？｣
『……』
｢A｣
『…何もないよ』
｢俺に嘘つくなんて、100億年早いんだよバァカ｣
Aは何も答えない。
｢言えよ｣
『……』
｢おい｣
頑なに口を割ろうとしないA。
俺はそんなに気が長く持たない、というよりどちらかと言うと短い方だ。
だから今、Aの反応だけでイライラしている。
――
｢何隠してんだよ｣
寮までたどり着くと、そのまま五条の部屋に連れ込まれて尋問を受けている。少し散らかった部屋に置かれているベッドの縁に座らされ、胡坐をかいた五条が下からAを見つめる。
｢さっさと吐け｣
『何もないよ』
｢じゃあその手は？どうしてそんなに震えてる？｣
『……大丈夫、大丈夫だから』
自分自身に言い聞かせるように、Aは何度も同じ言葉を繰り返している。
｢言ったよな？俺は最強だけど、お前は違う。だから俺が守るって｣
『……』
｢でもな、だんまり決めこまれると守りたくても守れねぇわけ｣
『……』
｢俺がどんなに守りたいと思っても、お前にその意思がなきゃ無理なんだよ｣
…Aがずっと黙り込んでいるのは、何も五条を想ってというわけではない。
特級呪霊との戦闘中、相当痛めつけられたことにより、意識を手放してしまった。
その際、遠く離れたところにいる｢A｣が危険を冒してまで肉体の主導権を握り、特級呪霊と対峙していたことに気付き、申し訳なさがこみあげていた。
だけどこのことを五条には話せるはずもなく、沈黙を選んだのだ。
｢…A｣
『悟には関係ないよ、私なんかに構わず他の人達のために…』
そこまで言って言葉を止めた。否、止めざるを得なかった。心底傷ついた、そんな顔をしていたから。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年3月8日 0時
