【過去編】14話 期待外れ ページ45
そのまま首を掴まれ、個室に引き摺り込まれる。
『…っ！』
｢君が、久禮田 Aだね？｣
『…離して』
人型の呪霊の割に、明らかに別格だ。人としての姿を保っている…、変身の術式でも使っていそうだが。
｢久禮田家の次期当主か…、にしてはとても弱そうだ｣
『……』
首を絞める手に力が入り、呼吸が一気に苦しくなる。掴まれている手に呪力を込めた手で掴もうとすると、
｢おっと、この状態で攻撃すると君も巻き込まれるよ？｣
『…っ…』
突然首を絞めていた手を離したかと思えば、腕を掴まれ羽交い絞めにされる。
『…何が、目的？』
｢次期当主がどんな奴か、見に来た｣
『……』
｢でも想像以上に弱そうで期待して損した｣
その瞬間、Aの身体は便器に叩きつけられた。破片が容赦なくAの身体を傷つける。
｢本当に…、そんなちっぽけな呪力で当主になれると思ってんの？｣
『……』
｢僕は認めないよ。こんな弱い奴…、久禮田の名が廃れるわ｣
特級呪霊がAを貶す。Aは奥歯を噛み締めながら、相手を睨みつけていた。
｢睨みつけたって、君は未だに術式を使いこなせていない。僕に傷一つ付けられやしない｣
そう言って特級呪霊はAの身体を蹴り飛ばす。そのまま壁を突き破り、背中を強打した。
すぐさま倒れているAのところに、特級呪霊が来て首を掴み上げる。
｢…2か月後の継承式で恥晒しされるくらいなら、今ここで殺したっていい｣
Aは何も口を利かずに、掴み上げている特級呪霊を見下ろしていた。だがその目は先ほどとは一変し、鋭さを際立たせている。
｢…何か言ったらどうだ？…雑魚が｣
『――言いたいことはそれだけか？』
途端にAの気配が一変する。尋常じゃない呪力が放出され、突然の事に驚き、特級呪霊はAを手放す。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年3月8日 0時
