【過去編】11話 極秘任務 ページ42
それからしばらくして、Aは上層部の元に出向いていた。
「…お前に極秘任務を言い渡す」
口頭では告げられず、資料を見せられる。
そこには―…【久禮田家 殲滅】とだけ記されていた。
「お前の手で、久禮田家に終止符を打て。手法は問わない」
『…何が目的ですか?』
今まで散々、下級呪霊討伐任務を言い渡されてこなしてきたが、予定外の上級が現れるたびに、上の連中の差し金だと気づき始めていたA。
今回も―…裏があるに違いない、そう睨んでいた。
「目的?お前が呪術師として、使命を果たすかを見極めるためだ」
『自らの手で、身内を殺せと』
「そうだ」
容赦ない返事にAは言葉を詰まらせた。
この人達は一体何を言っているのか―…、何一つ理解できなかった。いや、理解など到底したくはなかった。
仮にも血の繋がった家族だ。今までの恨みや辛みがないかと言われれば、否定できないが、それでも―…連中に認めてもらうために、一族を滅ぼせというのか。
残酷なことを突きつけるなぁと思う。だけどこの任務には拒否権が初めからない事をAは理解しているため、
『…分かりました』
「期限は半年だ」
『はい』
「尚、この件はここにいる者にのみ情報を共有する」
つまり、外部に情報を漏らすな…という事だろう。極秘任務と言うのだから当然と言えばそうなのだが。Aは連中の狙いが分からなかったが、深く考えたところで立場が危うくなるのは自分自身であるため、何も言うことはなかった。
『(…彼らと過ごす時間も、残り僅か…、ってことか)』
ふと同期の顔を思い浮かべる。
そして―…近づく別れに覚悟を決めるのだった。
【過去編】12話 3級呪霊討伐→←【過去編】10話 足手纏い
167人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Haru yama | 作成日時:2021年3月8日 0時