【過去編】8話 ｢大丈夫｣ ページ39
｢俺より先に奇襲をしてきた呪霊に気付いた。そして何の前触れもなく、呪霊を破壊した｣
『……』
｢お前がそのまま眠りについた時、もう目覚めないのではないかと思った｣
いつもと違う雰囲気の五条に、Aは少しだけ哀しそうな顔をした。
『ごめんね、足手纏いで』
｢……｣
五条はAを責めるつもりはなかったが、そう言われてしまうともどかしい気持ちになる。
｢…まだコントロール出来てないんだろ｣
『そのうち出来るようになるよ』
｢……いつもと違う雰囲気に、正直戸惑った｣
『……』
｢だーかーら、早く強くなれって話｣
急にいつもの調子に戻る五条。
『……え？』
｢プライスレスなんだよ、俺の存在は｣
『どういうこと？』
励まされているのか、貶されているのか訳が分からない。
｢頼ってくれたっていい、ってこと｣
五条の言葉にAは若干目を見開くも、すぐに笑った。
『大丈夫だよ、君達は何も心配しなくていい』
だけどAは五条の言葉に対し、応えるつもりはなかった。
｢！！…A｣
『自分の事くらい、自分で対処できるよ』
それを言わせるためにわざわざ聞きに来たなんて、悟も随分と暇なんだね。
なんて言われてしまう。
｢A、本当に…何もないのか？｣
『ないよ。…うん、大丈夫。私はまだ…大丈夫だから』
自分に言い聞かせるように呟くAに、五条は尚更心配そうに見るが、Aは席を立つ。
そして軽く微笑むと、用事を思い出したと言って引き留めようとする五条の声を無視し、彼女は教室から出て行った。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年3月8日 0時
