【過去編】6話 休みの日 ページ37
Aが目を覚ました時、そこは自分の部屋であることに気付くのにそう時間を要さなかった。
だけど―…
「あー、起きた」
「もう朝だよ」
『……?』
添い寝するようにいる五条と、ベッドのすぐ下に腰を下ろしてこちらを見る夏油がいた。
『何事?』
「暇つぶし」
「悟、嘘はよくないよ。Aが心配できたんだろう?」
『?』
「眠れないって私の部屋に来たのは誰だろうね」
「うるせーぞ傑」
「悟こそ、いつまでも中学生のような態度はやめた方がいいと思うよ」
今にも暴動が始まりそうな雰囲気に、Aは苦笑い。
『…喧嘩するなら他所でやって。悟も傑も心配できたんでしょ、ありがとう』
「私は何もしてないよ」
なんやかんやで心配してきてくれたと分かった途端、この巨人2人が可笑しく見えた。
五条に関しては恥ずかしいのか何なのか分からないけど、Aに抱き着こうとしている。
が、するりと布団から出て、Aは鏡の前に立っていた。
「ということで、A」
『ん?』
「今から出掛けようか」
『は?』
「何か他の用事でも?」
『特にないけど』
「じゃあ行こう、どうせ出掛けるつもりだったんだろう?」
夏油には全部お見通しらしい。
「1人より、3人の方が楽しいよ」
勿論、硝子には内緒でね。…と人差し指を唇に当てる夏油に苦笑い気味。
――…
「何してんの?アイツ」
「あれ?悟はAと出かけたの初めて?」
「お前は知ってんのかよ」
何故かAの用事に付き合わされている俺達。公園にたどり着くや否や、Aの元に子供達が駆け寄り、何やら遊び相手になっている。
「…Aは人に好かれるみたいだね」
普段の様子とは桁違いなくらい、笑顔が多い。俺達に見せることのない笑顔を、子供達に振りまいていることが、気に食わない。
「(…何だよ、あんな顔…俺に見せたことないくせに)」
「悟もAに変にちょっかいさえ出さなければ、あーやって笑ってくれるよ」
するとそこに、
『悟、傑』
「なんだい?」
「んだよ」
『…付き合わせてごめんね。もう終わったから帰ろう』
子供達はAに手を振って、見送っている。
「んじゃ、パフェ奢って」
『アイスならいいよ』
「私はいらないかな」
『付き合わせたから、傑も食べたいもの選んでね』
そう言って先を歩くAに傑も続く。
「あー、嫉妬するわー」
俺もAたちの後を追った。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年3月8日 0時