片割れの呪術師【呪術廻戦】 (ページ29)

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27話　誰も知らないページ29

『特級呪霊にとって、私の肉体は"器"と同じようなもの。肉体の主導権を奪えば、人間界に紛れ込むことだってできる。だから奴らは襲撃した』

｢……奴らって？｣

『…久禮田家が生み出した、失敗作』

Aは小さく息を吐き、言葉を続ける。

『奴らは―…私以外の被験者だ』

｢まさか、人体実験の…？｣

五条の言葉に、どういう意味かと家入は問う。五条は以前Aが話していたことを、家入にも説明した。

｢Aは、そいつらに追われている？｣

『そうだよ、だから言ったじゃん。両者から追われているって』

両者―…それは呪術師と、呪詛師…、および特級呪霊という意味である。

｢…なぁ、A｣

話している間、ずっとAを抱きしめたまま離そうとしない五条は、Aに問いかける。

｢もう1人でどこか行かないで。僕を頼ってよ…、知ってるでしょ？僕が強い奴だってこと｣

『……』

｢…君はすぐにどっか行っちゃうから、"縛り"を付けたっていい｣

『それは困るな』

｢それが嫌なら、傍にずっといてよ。僕が守るから｣

『……』

Aは何も答えない。ただ、困ったように笑うだけ。

｢A｣

『……悟って、こんな人だったっけ？』

気づけばその場に家入はおらず、2人きりになっていた。ずっと五条から顔を背けていたAだが、五条に手を添えられてそのまま口づけを交わす。

｢…絶対に、Aは誰にも渡さない｣

決意を秘めた言葉に、Aはどこか哀しそうな目をして五条を見ていた。
それは―…既に叶えられないことを分かっているから。

12年前に―…
彼らの知る｢久禮田 A｣が殺されてしまっている事実を―…

誰も知らない。