22話 九十九由基 ページ24
部屋に戻ってきたAは、ある書物を開く。
そこには12年の間にAの手で殺してきた人の名前が羅列されていた。それは500人を優に超える。その中にはA血の繋がった親戚も含まれていた。
Aは手元にある双刀に目を向ける。
『…これをどう使いこなすかは、自由だよね…?九十九さん』
Aは九十九との会話を思い返す。
それは―…事件前日の朝の出来事。
呪術高専を訪れていた九十九は、当時2年だったAと会話をする。
〈…アナタが呪詛師輩出する家系の人間ね?〉
初対面にも関わらず、九十九はAが呪詛師を輩出する久禮田家の人間であることを見抜いた。
〈…何ですか?〉
〈アナタ、実力を隠すの上手ね。その仮面に秘密があるのかしら?〉
〈!!〉
Aは驚きつつも、相手を見据える。
〈見た感じ武器を持っていないようだから…、アナタにあげるわ〉
〈はい?〉
突然九十九に投げ渡されたのは、双刀。脇差くらいの長さで、握った途端手になじんだ。
〈呪詛師を輩出する家系の人に訊くのもアレだけど、あなたは呪霊被害をどう見ている?〉
その問いにAは迷わず答えた。
〈呪霊を狩るだけの対処では、呪霊被害の根本的解決には至らない。呪霊の発生を防ぐことが必要不可欠だが、呪霊の発生要因は非術師から漏出した呪力が澱みのように積み重なったことで形を形成する。
その上で非術師を滅ぼすという、選択も間違いではないと考える〉
Aの答えに、九十九は目を見開く。
〈呪術師も非術師も特別扱いしない。全人類が呪力を持つ、または持たない世界が作れるのなら、私は今の狂った世界を変えたい〉
〈…意外ね。アナタ何年生?〉
〈…2年です〉
〈2年でそこまで現実的なことを話せるなんて…、久禮田家で洗脳でもされなかったのかしら?〉
〈そうですね…、洗脳はありましたが、今日でそれとも決別できそうです〉
その言葉に九十九は何かに気付く。目の前にいる高専生徒は、ただならぬ強い覚悟を持って、何かを成し遂げようとしているのだと。
〈…そう。アナタならそのうち有望な呪術師にでもなれそうね。将来が楽しみだわ〉
そう言って九十九はAに背を向けて歩き出した。
そしてその2日後―…、
Aは久禮田家宗家および分家 総勢130名を呪術で皆殺しにしたのだった。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年3月8日 0時