19話 戦闘スタイル ページ21
『そういえば悟は勿論、同期誰一人として私の戦闘スタイル知らないもんね』
五条の反応を見て、Aは思い出したかのように言う。
「どういうことだ?」
『んー、入学当初から上と仲が悪くてね。実力があると行動が制限されるから、敢えて3級程度に呪力を抑えていたんだよ。単独任務の時は別だけど、悟達と行動する時は、いつも後方支援に徹していた』
だから本来の実力は常に伏せられていて、ある意味行動がしやすかったとまで。
『…多分、話すより実戦を見た方が早いと思うよ』
そう言って任務の時に呼んでくれれば、同行するよといい、軽く伸びをした。
「…ということで、Aの強さはこれで証明されたね」
五条がそう言うと、空気を打ち消すようにパンパンと手を叩く。
「じゃあAが副担を務めることに異論がある人は?…いないね」
『…んじゃ、改めてよろしくお願いします』
そう言って突如始まった組手訓練は幕を閉じたのだった。
―廊下―
「…それにしても、A。相変わらず隠し事多いね」
生徒3人と別れた後、職員室まで歩いていると、隣にいた五条が呟いた。
『あの頃はまだ、お互い何も知らないからね』
「上の圧力が凄かったことは認めるけど…、どうして相談してくれなかったの?」
五条は歩みを止めて、先を歩くAを見る。
『…相談する必要がないと思った』
Aは五条の方を振り返り、ただ笑うだけ。
「僕達頼りなかった?」
『……違うよ』
Aは首を横に振り否定する。
『信じていたからこそ、何も言う必要がないと』
「!!」
『過信しすぎたかもしれないけどね』
12年もの歳月の間、無実の罪でAが追放されていたのだが、誰一人として疑うことをしなかったのは事実であり、今更よりを戻そうだなんて本人は思っていない。
『…んじゃ、これから任務だから』
「…は?」
『また数日後ね』
Aはそう言って会話を強制的に終了させると、そのまま去ってしまった。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年3月8日 0時