13話 復帰と赴任 ページ15
―都立呪術高専―
目の前にいるのは、京都校の学長―…楽巌寺 嘉伸と東京校の学長―…夜蛾 正道。
「…12年ぶりだな、久禮田 Aよ」
『……』
12年前にAを呪術界から追放した際に関わっていた、保守派の1人で、入学当初から確執がとにかく酷かった。
「どこにいたか、詳しく話してもらおうかの?」
『話す必要がありますか?』
Aは苛立ちを露わにし、楽巖寺を睨みつける。
「その返答次第で、お前の采配を決めようではないか」
『国外を拠点にした』
「…ほう?何故だ」
『私は呪詛師を代々輩出していた久禮田家宗家分家を殲滅し、アンタらの策略により、呪術界から追放された。同時に呪詛師の中でも逆賊として扱われ、両者から追われる身となり、事件後すぐに国外逃亡を選択した。そして―…帰国したのは、虎杖悠仁が宿儺の器となった頃』
夜蛾に自身のパスポートを手渡し、確認してもらう。
「…確かに、つい先月帰国したようですね」
それ以前の帰国記録は一切ありません、と夜蛾は言う。
「我々の任務通達より先回りして呪詛師を殺しているのは、お前だな?」
『それが何か?』
「邪魔をしたいのか?それとも、別の目的があるのか?」
楽巖寺の問いに、Aは嘲笑う。
『追放されたとしても、地位を奪われたとしても、信念を貫く。そこに理由などいらない』
その一切迷いのないAの言葉に、夜蛾は目を見開く。
やはりかつての教え子であることに変わりはなくて、12年前の事件を境に呪詛師へとなったと聞かされたが、根本的な部分は何一つ変わっていなかったのだ。
「…なるほどな」
楽巖寺はジッとAを見ている。
「…ならばお前に役職を与えよう」
『…役職?』
「久禮田 A。お前を1級呪術師として1年間のみ、名乗ることを認める」
『……は?』
突拍子もない楽巖寺の言葉に、Aは呆気にとられる。今まで散々な扱いだったにもかかわらず…だ。しかも1年間という、条件付き。
「不満か?」
『いや、そうではなく…。何で今更?』
「そして、都立呪術高専1年の副担任をしてもらう」
『はい?』
しかも何故か副担任に当てられる。こうしてAは楽巖寺の采配により、呪術界での立場を取り戻しただけでなく、高専の副担として現場復帰することになった。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年3月8日 0時