96. 鬼・柘榴丸 ページ49
だが、どうだ…?本当に―…、「あの方」が欲するほどの者なのか?
柘榴丸には理解できなかった。目の前にいるのは、確かに今まで見てきた「柱」の中では、圧倒的な実力を誇る。
すると―…、急に目の前にいた白髪の剣士の気配が変わる。
「…!!なっ…!!」
白髪の剣士は深く腰を構えて、二刀を構えている。
『血の呼吸、陸ノ型、血焔の咆哮!!』
「!!」
それは変幻自在に柘榴丸に襲い掛かる。いくら距離を取ろうにも、容赦なく追いかけてくる。
それはまるで―…、意志を持つように。
『血鬼術・黒血枳棘!!』
流れ出る血を茨状に伸ばして攻撃を仕掛け、そのまま柘榴丸の両手足を捕らえる。そして飛び上がり、柘榴丸の頸めがけて二刀を振るう。
「何故…、お前が―…!!」
人間であるはずの白髪の剣士が、血鬼術を…!?しかも、今の白髪の剣士の気配は、上弦の鬼と同等―…、否それ以上かもしれない。圧倒的な実力差を前に、なす術のない柘榴丸。
そして柘榴丸の頸は、白髪の剣士の手によって頸を落とされるのだった。
――
結界が解けていくと同時に、山の向こうからは朝日が覗いていた。
朝日の眩しさにAは目を細める。そして煉獄達の方を振り返れば、どうやら無事に切り抜けたらしい。
「Aさん!!」
こちらに駆け寄ってくる井草の姿に、Aさんは笑みを見せる。だが鬼の血鬼術により、身体を思うように動かせず、刀を支えにどうにか立ち続ける。
「…鬼の血鬼術を浴びたんですね。これってどうすれば…」
医術に詳しい井草であっても、鬼の血鬼術に関する知識は皆無であり、どう処置をすればいいか悩んでいる。
そして少し離れたところには、初見に支えられている煉獄の姿があった。多少傷ついているようだが、軽傷だろう。
『…初見さん』
「…ひぃ!!」
Aは井草に身体を支えてもらいながら、初見に声をかける。初見は完全に怯え切っており、Aを睨みつけていた。
『今回の件で、鬼が「白髪の剣士」狙いであることは分かったはずだ。君が俺の真似をするのは勝手だが、それにより任務中では鬼の標的となりうる』
そう…、Aが以前初見に警告したのはこれが理由。
『しかも、君は今まで鬼を殺したことはないという。結果、上官である煉獄が君を庇いながら戦うほかない。だが、「白髪の剣士」狙いである以上、雑魚鬼はまず向かって来ない。ほぼ、元・下弦と言っていい』
そして、Aは初見の胸倉を掴み上げる。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時