93. 強い鬼の気配 ページ46
「な、何故だ…!!お前のその気配は―…」
『口達者な鬼だな。その口ごと斬り落としてやるよ』
だがどうも先ほどから、別の気配がある。目の前にいる鬼は、確かに雑魚鬼なのだが、強い鬼の気配を感じるのは、気のせいではない。
そのまま鬼達との死闘を繰り広げていた2人の元に、井草と初見の声が響く。
「ま、待って!!初見さん!!そちらは危険です!!」
「何でよ!!煉獄さんが戦っているのに、助太刀しないと!!」
「あの方々は、柱なんですよ!?むしろ、邪魔になってしまいます!」
「うるさいわねぇ!!私に向かって命令しないでくれる?私に指示できるのは、煉獄さんだけなの!!」
そう言って、井草の制止を振り切りこちらに向かってくる初見の姿があった。
煉獄はちょうど彼女から背を向けていることもあり、気づいていない。それと同時に、強い鬼の気配は煉獄の方に向かっていることに気付く。
『…くそっ…』
Aは煉獄の元へと駆け出す。そして―…
ズシャアア!!
何かが斬り裂かれる音と共に、辺り一面に飛び散った。
――
「煉獄さん!!」
不意に鬼の頸を斬り落とした時、背後から初見少女の声が聞こえ、振り返ると彼女がこちらに向かって駆けてくるではないか。一旦、A少年によって安全地帯に避難させたはずなのに。
「…!!こちらに来てはいけない!!下がるんだ!初見少女!!」
「いえ!!私は大丈夫です!!お手伝いします!」
だけど彼女は俺の言葉に耳を貸すことなく、駆けるのをやめない。
その時、他の鬼達が彼女に襲い掛かる機会を窺っていたことに気付く。俺はすぐさま彼女の前に立ち、鬼の爪を刀で防ぐ。
「…っ!私、煉獄さんのお役に立ちたくて…」
「いいから、下がりなさい!!」
いつになく真剣な表情で言う俺に、初見少女は怯えたような目で見ていた。その時―…
「!!」
突如前方から、禍々しい鬼の強い気配を感じ、刀を構える。だが、姿を捉えることが出来ない。
「くっ…、一体どこに…!!」
すると耳元で鬼が囁く。
「……これで、柱の頸を取ったり」
気づけば俺の頸めがけて鬼の手が伸びてきていた。
その手が頸を掴む―…その直前。
その場に血飛沫が舞い、同時に砂煙がその場を覆った。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時