86. 18日目・移動日 ページ39
屋敷では井草が、全集中・常中の特訓をしていた。
『幸次郎、これから煉獄達と合同任務に行くことになった』
「え…、煉獄さん達とですか!?」
あの件以降、Aは井草の事を下の名前で呼ぶようになっていた。それは、彼を鬼殺隊士として認めたことを意味する。
そして煉獄達と合同任務に行くことになったと聞き、尚驚く。それもそうだろう、現在渦中の2人がまさかの合同任務だなんて、波乱の予感しかしない。
だけど同時に、井草はAの狙いに気付く。
「まさか…、煉獄さんを助けるため?」
『それもあるが、現場で死を直感したほうが説得力ありそうかなと』
「…結局本人は、Aさんの警告を無視していますからね」
井草の言う通り、わざわざAが本人に言ったにもかかわらず、彼女は真似を続けているのだ。
なので、真似されるのが嫌になったAは、羽織を変えることにした。それだけでも、また随分と印象が変わるらしい。
『…戦力としては3名だけだし』
「…ん?あの人、数に含んでないですよね?」
『そりゃあね。あの怠惰な姿を見りゃあ、君との差は歴然だよ』
Aの言う通り、ここ数日で井草は格段に成長を遂げていた。恐らく、今の彼なら戊まで昇格可能だろう。それほどまでに実力が上がったのだ。
「…確かに容姿は真似できたとしても、実力は別ですもんね」
『そうだね。さて、遅れると色々面倒だから行きますか』
「はい!」
そして2人は旅立つ準備をした。
―列車内―
列車の乗り継ぎを繰り返し、今回の任務の場所へと向かう。
煉獄の斜め向かえには初見が座っていたが、通路挟んでの座席には井草しかいない。井草はAがいないことに気にも留めることなく、書物を読んでいた。
「井草少年!」
「…はい?」
駅弁を爆食いする煉獄は、井草に声をかけた。
「A少年は何処へ行ったのだ!!」
乗車するまでは一緒だったが、列車が動き出したと同時に席を外しているのだ。
すると井草は1本指を出した。
「上で休んでいられるかと」
「え、列車の上で休んでるんですか!?器用なことをするんですね〜」
初見はAを小馬鹿にしたように言うが、その理由を知る井草は若干顔を引きつらせる。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時