85. 垣間見えた姿 ページ38
2人がその場から去った後…
「…にちか。煉獄の受け持ち隊士―…、初見明がAの格好を真似ているという噂は本当かい?」
傍に控えていたにちかは、頷く。
「はい。髪型も羽織もそっくりに真似ていると聞きます」
「…それで、Aは杏寿郎との合同任務を申し出たのか」
お館様はすぐにAの意図に気付く。
容姿を真似るということは、鬼に狙われる危険性が高まるという事。そして鬼達は今や、「白髪の剣士」を標的としているため、必然的に狙われる。
「自分のせいで誰かが傷つくのを嫌うAのことだ。無茶をしなければいいけども…」
だがそのお館様の心配は、後に的中する。
――
Aは一旦任務に発つ為に準備をしに、屋敷に戻ろうとすると、
「A少年!」
煉獄に呼び止められた。
「今回の任務、よろしく頼むぞ!」
『あぁ。足手纏いにはならないよう気を付けるわ』
冗談を言うAに、煉獄は苦笑い。そして、あぁと思い出したように話し出す。
「それと…、初見少女についてなんだが」
『なんか俺の真似をしているらしいね。だから、俺、羽織変えたのさ』
そういえばいつも身につけている青みがかかった羽織ではなく、青い彼岸花が散りばめられた羽織だった。
『人と被るのは嫌なのでね』
「…すまない」
『それに―…、あの羽織の意味を知らないで着ている姿を見るのが、無性に腹が立つ』
「!!」
Aの言葉に、思わず煉獄は歩みを止める。
煉獄自身、Aのことを何も知らない。鬼殺隊創立以前から、鬼と戦ってきた緋威羅木家の末裔であること。そして、血の呼吸を使う柱の1人であること。
だけど、以前垣間見えた、Aの闇の部分。それは、自分達とは生きる世界がそもそも違うという事だ。
それぞれ、鬼殺隊に入隊する目的はあるかもしれない。だけど、彼の場合、生まれた時から宿命を与えられ、全うするまで剣を振るう。明らかに生きる世界が違う。
『…じゃ。またあとで』
屋敷に到着したAはそこで煉獄と別れた。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時