84. 17日目・合同任務 ページ37
『…隊士にいる間、兄には会えたのか?』
「会えました…、多分ちょうどその頃にAさんの元に就いていたんだと思います。一度だけ、Aさんの話が出ましたし」
『…そうか』
「すごく褒めていました。若干12歳で「柱」まで昇格し、圧倒的な実力も兼ね備えるも、それを奢らずに、その人の元に就いて自分は幸せ者だと…。的確な指導の元、心身共に鍛えてくれている…」
〈だからもし機会があれば、幸次郎もあの方の元で指導を受けるといい。Aさんは素晴らしいお方だ〉
そう言って頭を撫でて、兄はそう自分に言っていた。
Aはその話を聞き、目を見開く。他人の評価に興味はないとはいったものの、本当に慕われていたのだと改めて気づき、井草の兄に感謝する。
「…僕、貴方の元で指導を受けることができて、幸せです。実際貴方の鍛錬の成果が、前回の任務の際に発揮されました。初めて、自分の手で鬼を倒すことが出来たから」
『…そうだな』
Aはゆっくりと立ち上がる。
『…まだ期限までに日にちがある。君はこれからも強くなれる、俺が保証する』
「……はい!よろしくお願いします!!」
その時の彼の表情は、かつていた隊士と全く一緒だった。
――…
数日後、本部で煉獄と遭遇した。
先日のこともあり、気まずそうにしていたが、当の本人は全く気にしていないので、挨拶だけ交わす。
そしてお館様より任務を言い渡されるのだが…
「この任務は、杏寿郎とAの2組で行ってきてほしい」
「!!」
『御意』
合同任務を今まで拒んできていたAと組むことになり、煉獄は驚くが、Aは同意する。
そして跪いていたAはすぐに立ち上がり、お館様から背を向ける。
「A」
『はい』
そんな彼をお館様は呼び止める。
「何かあったのかい?」
『…何か、とは?』
「いや、まさか君から杏寿郎との任務に同行したいと言ったからね。どういう風の吹きまわしかと」
「…!」
そう、今回の合同任務はA自身が、お館様に直接掛け合って実現したものなのだ。
理由がない限り、そのようなことはするはずがない。
『別に。後輩隊士にも、他の柱との連携が取れるよう訓練が必要かと』
だがAは深くは語らない。あくまで表面的な面だけをお館様に言う。
「…そう、わかったよ。Aがそう言うなら。杏寿郎もよろしくね」
「御意!」
煉獄もお館様の命であればということで、返事をした。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時