81. 自業自得 ページ34
『どちらの選択でも俺には害がないから、勝手に決めてくれ』
そう言ってこの話題は終了だと言わんばかりに、初見の横を通り過ぎる。
「ま、待ちなさいよ!!」
そう言ってAの腕をつかんだのが運のツキ。
気づけば初見の身体は宙に浮き、そのまま受け身をとることなく背中から思い切り、床に叩きつけられる。その頸に、刀身を当てられて。
『二度と俺の前に現れるな。次に何か面倒事を持ち込めば、隊律違反であろうとお前を殺す』
「…ひぃ!!」
頬を叩かれた時以上に、凍てついた目でしかも、殺気を向けられた初見は、目に大粒の涙を浮かべ、冷や汗を垂らす。完全に怯え切っている初見を見下ろし、あからさまに舌打ちをすると、Aは刀を鞘に納めて、その場を後にした。
――…
屋敷に戻ってきたA。丁度そこでは食事の準備をしている井草がいた。
「…何か、あったんですか?」
疲れ切った様子のAに、井草が声をかける。
『初見ってやつ、相当面倒なことをしてるわ』
「…え?あぁ、なんかAさんの格好を真似ているって―…」
『そのせいで、煉獄が負傷した』
その言葉に、井草は驚きを隠せない。それもそうだ、前回任務に行く前に、伊黒と甘露寺達と立ち話した際に、話していたことが、まさに現実となったのだから。
『そのうち、煉獄死ぬぞ』
「それってまさか本当に―…、Aさん狙いで?」
『そりゃあな、鬼達は今や白髪の剣士狙いで来てるから…。初見が俺の姿をし続ける限り、俺自身は安泰だけど、煉獄はアイツを庇いながら戦うことになるから、骨が折れるぞ』
他人事のような話し方に、井草は何とも言えなくなる。だけど、これはさすがに…
「(初見さんの自業自得…、そうとしか思えない)」
どうも彼女の味方になる気にもならず、明日から良からぬ噂がまた立ちそうだが、気にしないようにしよう、そう思った。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時