79. 中途半端な存在 ページ32
｢…え？傷が…、塞がっていく…｣
そのまま血を拭えば、傷跡など初めからなかったように綺麗な状態になる。
『俺は人ではないから。条件を満たさない限り、死ぬことはない』
｢…そんな、これじゃあ…まるで―…｣
『鬼、まさにそうかもしれないね』
井草は有り得ない…、そう言った目でAを見ていた。この方が鬼だなんて…、信じたくない。
だけどもし鬼なら、昼間は出歩けないはずだし、人を襲うことを厭わないはず。なのに、そんな事は全くないし、一体この人は―…。そう思考を張り巡らしていると、
『俺はね、人でも鬼でもない中途半端な存在なんだ。だけど、こんな体のせいで、俺はかつて自分の下にいた隊士を死なせることになった』
｢…！！｣
『…さぁ、戻ろう。そろそろ夜も明ける』
山の向こうから太陽が昇り始めていた。そうして、2人は無事に任務を終えて、帰還することとなった。
――
翌日、休息日としたAは、蝶屋敷を訪れる。未だ意識不明の中眠っている炭治郎の様子を見に来たのだ。
蝶屋敷には既に先客がおり、負傷した不死川ペアと冨岡ペアがいたのには、苦笑い。
すると玄関から慌ただしい声がした。
｢炎柱様！！炎柱様、大丈夫ですか！？｣
｢早く！！早くしのぶ様を呼べ！！｣
｢炎柱様、止血をっ…！！｣
｢れ、煉獄さんはっ、私を庇って…｣
玄関を覗くと、数人の隠と床に手をつく煉獄。そしてそんな煉獄を見て涙を浮かべる初見がいた。
初見の髪型、羽織は本当に全く同じだった。煉獄の顔の左半分は紫色に変色しており、苦しそうに肩で息をしていた。恐らく、鬼の毒か何かに蝕まれているのだろう。
『…煉獄、顔見せろ』
その声に、煉獄は顔を上げた。
｢あ、A…少年…｣
｢血柱様！！｣
煉獄の顔を覆う毒。やはり、鬼の血鬼術。人目がなければ治療は可能だが…。
｢むぅ…、鬼の血鬼術を喰らうなど不甲斐なし！！よもやよもやだ！！｣
『アホか。おい、立つなよ…』
煉獄が無理に立とうとする。だが力が入らないのか、倒れこんでしまう。が、受け止めようとする前に煉獄の後ろにいた初見が動いた。
｢動いちゃダメですよ、煉獄さん！！｣
｢あ、ああ…、すまない…｣
初見は煉獄を受け止める。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年5月26日 0時
