73. 口達者な女 ページ26
――…
｢水の呼吸！流流舞ぃ！！｣
井草の気合の入った声が響く。たった数時間で煉獄の熱い指導の元、着実に成長している。一方―…
『長い休憩だな』
｢はい。私は貴方達が来る前からずっと鍛錬してたんです。なのに動けって言うんですか？鬼ですね｣
縁側でお茶を飲みながら、初見はふてぶてしく言う。Aはそれに対し全く興味を示さず、縁側に座って空を見上げていた。初見のその瞳は、向こう側で井草の指導をしている煉獄を一直線に見つめている。
｢でも、緋威羅木さんは私に付き合って休憩しなくてもいいんじゃないですか？私より動けなきゃおかしいですよね？｣
その無礼極まりない発言を、柱であるAに言っていいのか？と呆気にとられるA。
すると不意に、煉獄がこちらを見た。
｢そこ！！いつまで休憩してるんだ！！鍛錬に戻りなさい！！｣
｢はい！すいません！！緋威羅木さんが少しぐらいサボってもいいというので、甘えちゃいました！！｣
これにはAのみならず、煉獄の指導を受けていた井草もびっくりしている。
井草自身、彼がそんな不真面目なことを言う人だとは思っていないからだ。
｢うむ！そうか！A少年！！真面目に鍛錬を行ってくれ！！｣
『あー、はいはい。菓子ばっか食ってないで、さっさと動け』
息をするように出てくる女の嘘に、間髪入れずに鋭い指摘をするA。同性相手だと、虐めたくなるのは何故だろうか…。無性に腹立たしい…。
Aは縁側から立ち上がったかと思いきや、いつのまにか手に持っていた竹刀を片手で振り回している。その言葉に、憧れている人の前で恥をかかされた初見の顔が赤くなっている。
そして渋々、食べていた手を止めて、こちらに来た。
『…んで？君は何の呼吸を使うんだ？』
｢はーい！花の呼吸を使いまーす！やっぱり花の呼吸を使えたら、女性らしいじゃないですか？｣
同性でありながら、彼女の言い分を理解できない。すると、初見が急に手で顔を覆って泣き出した。
｢酷いです！！｣
『何が？』
いや、そんな泣きの演技をされても。初見の声が大きすぎて、煉獄もこっちを向いたよ。
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作者名：Haru yama | 作成日時：2021年5月26日 0時
