69. 初任務_夜 ページ22
―夜―
廃れた神社に、Aは井草を連れて訪れていた。
『さて、鬼狩りだ』
「こ、怖いです…」
長い階段を上がった先に、苔の生えた鳥居を潜る。
すると、お堂の中には鬼がいた。それも、腕が4本ある雑魚鬼。お堂の中は血まみれで、攫って来た人間をここでのんびり食していたのだろう。
『さて、刀を抜け』
「あ、はい…!」
井草は刀を抜くも、その手は鍛錬の時とは異なり、かなり震えている。
『両手でしっかり握っていろ。決して離すな』
Aも刀を抜くと、ようやくA達の存在に気が付いた鬼が、長く鋭利な舌を突き出してきた。明らかに弱そうなやつを狙った攻撃に、Aは井草の後ろ首を掴み、後ろに下がらせる。
「ひ、ひいぃ…」
『ったく、自分でそこは避けてくれよ』
串刺しなんて見たくないんだけど…、と若干呆れ顔で言うA。だけどAの言いつけを守り、刀を手放すことはしていない。
『…まぁそこの根性は認めてやるよ』
「あ?何だテメェ、へっぴり腰のやつも鬼殺隊かよ」
ケタケタと笑い出す鬼に、井草は完全に委縮してしまっている。だが、
『黙れ。お前に彼を侮辱する資格はない』
「!!」
「ほう…?そっちの白髪はやりがいがありそうじゃねぇか…、そこのガキに比べて」
『今はまだ、彼はお前の頸を斬ることはできないかもしれない。だが、努力を続けている者は、いずれ開花する。それがただ、人より遅いだけ』
「…!!」
Aの言葉に井草は顔を上げる。そして、その背中に目を向ける。
刀を構え、そして鬼の頸へと狙いを定める。
『…井草、今回は俺があの鬼を殺る。殺した後も、その刀を手放すなよ』
「…!は、はい…!!」
「その余裕口を利かせられなくしてやるよ―…!!」
そしてあっという間に鬼の間合いに入り込んで、瞬きする間もなく頸を斬った。
鬼の断末魔が響き渡り、井草は怯えている。
だけど、鬼を目の前にした最初とは異なり、刀を握る手の震えが止まり、鬼が消滅していく様子を、ただじっと見つめていた。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時