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63. 的確な指導 ページ16

『…まず、先程の水の呼吸についての指摘だ。君の型は弱すぎる。本来なら、水の呼吸を使えば、水流と言うのが見えるものだ。刀の振るい方によってな、だが君の型にはそれが見えない』

「…え、僕…、水の呼吸の適性がないのでしょうか…?」

『呼吸の基礎は出来ているから、それは違う。問題は、構えだ。君は低姿勢過ぎる』

「…構え…」

『筋力だな、君はあの9人の中で恐らく一番基礎体力があり、且つ多少の筋肉はついているとみる。それは、君が兄との約束で積み重ねてきた、鍛錬の結果だ』


あの場だけで、個々人の状態は勿論、素質をも見抜いていたAに、井草は目を見開く。
そして何より、的確な指導に加えて、強い志を持ち、優しい心で相手に寄り添う。
昨日はとても冷徹な印象を覚えたのに、それが一変するほど。


『…あとは刀を持つことを恐れないこと』

「!!」


Aは井草を連れて、裏庭に連れて行く。そこは鍛錬場だった。何本も地面に設置してある、短く切られた竹に近づく。


『…瞬きするなよ』


日輪刀を取り出すと、竹の目の前で振り切る。刀身は竹に当たってはいないが、竹はかまいたちでスパンと両断された。


「!!…えぇ!!」

『最終的には、これをやってもらう』

「む、むむ、無理ですよぉ…!」

『これを極めるには、完璧な呼吸、構え、そして周りの風を感じること。あとは―…刀を自分の身体の一部として扱うこと。そうすれば、君は確実に強くなる』

「…は、はい…」


それからというもの、血の滲むような鍛錬が始まった。
だがAの期待を裏切らないようで、多少キツイことをしてもへこたれることはなく、必死についてくる彼を見て、かつて自分の下についていた隊士のことを思い出していた。



――…

柱直接指導訓練開始から数日。
今日も早朝から、煉獄家には俺の声が響いていた。


「うーむ。初見少女!!もっと刀を握れ!足を踏みしめろ!!」


お館様の柱直接指導訓練の意向の通り、俺達柱は隊士を1人受け持つことになった。
俺の相手は初見明という女性。
だが、女性だからと鍛錬を手加減してしまっては意味が無いので男隊士同様厳しくやっているのだが、どうにも初見少女は根性が足らない。


「…で、でもぉ…!もう腕が振れません…!痛いです…!!」


まだ素振り100回だというのに、もう根を上げてしまっている。


「はっはっは!!君は先が長いな!指導甲斐がある!!」


ここ数日、他の柱達も見かけた。

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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時

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