59. 個別指導訓練 ページ12
「うん。実際、天元の後釜に入れる強さの隊士がいないんだ」
「あぁ、鬼殺隊はこれからどうなっていくのか…、南無阿弥陀仏…」
「だから皆には、個別指導訓練を行ってもらいたいと思う」
その言葉に、全員がぽかんとする。
「君達には1人ずつ隊士を受け持って、指導してもらうことにしたよ。もちろん柱は忙しいし、たかが1人に割いている時間はない。だからと言って、大勢に教えている暇もない。だから自分の任務に受け持った隊士も連れて行き、戦い方、構え方の基礎を教えるだけでいいんだ」
『(……何言ってんだこの人)』
「期間は約1ヶ月。その間、自身の担当の隊士と行動を共にし、鍛え上げてほしい。そして今度はその隊士達が、他の隊士に教えていく。君達が担当する隊士達も今日、ここに呼んである」
Aはお館様の思惑に早くも小さく息を吐いた。
「君達が受け持つ隊士は、鬼殺隊の中でもなかなか上の階級に上がれない隊士達だ」
『(…つまり、他の隊士よりも特に(目立って)劣るという事)』
不意にがやがやとした声が聞こえた。
「来たみたいだね」
その言葉通り、屋敷の角から隠に案内された9名の隊士達が姿を現した。誰一人、出会ったことのない隊士だった。
髪色が派手な人や、挙動不審な人、極度の人見知りかずっと俯いている人、体格が大きかったり、幸が薄そうな人など。
「集まってくれてありがとう、皆」
すると、髪色が派手な男が鼻をほじりながら口を開く。
「あのー、すんません。柱って9名で、1人引退したと聞いたんすけど、何か1人多くないですか?」
お館様を前にして、跪くこともせずにこの態度。座っているお館様や、跪いている柱達よりも目線が高い。
「こらお前!!何だその口調!!跪かねぇか!!誰の前にいると思ってんだ!!柱とお館様の御前なんだぞ!!??一介の隊士如きが上の目線で話せる方じゃねぇんだよ!!」
「は?知らねぇよそんなん。俺達は鬼殺隊で命を懸けて頑張ってんだよ!俺らが感謝されるべき…ごふっ!?」
光の速さで不死川が男の頭を地面に押さえつけた。これには誰1人止めようとする者はいなかった。
「テメェ!!頭が高ぇんだよ!!テメェらをまとめてくださってんのはお館様だろうが!!そんな態度なら、鬼殺隊をやめちまえ!お前がいようがいまいが、何も変わりやしねぇ!道端で死に腐ってろよ!!」
多分、この場にいた柱全員の心の中で叫んだ言葉を全て口に出して言ってくれたようなものだ。
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作者名:Haru yama | 作成日時:2021年5月26日 0時