クロスキューブ 31 ページ10
成「．．．あんたに言われたくない」
成島さんの声からは、一切の感情が失われていた。
ハ「ぼくだってこんな押しつけがましいことは言いたくない。
でも、ぼくが言わなきゃ、きみのまわりで誰が言ってくれるんだい？」
成「．．．うるさい」
ハ「家族の問題はきみが折り合いをつければ解決するんだ。
どんなに辛くても苦しくても、きみが我慢する時なんだよ。
でなければみんな不幸になる。きみの弟もそんなことは望んでいない」
成「．．．できるわけ、ないじゃない」
ハ「これからもずっと不幸を盾にして生活していくつもりかい？」
成「．．．聡が死んで、まだ一年しか経ってないのよ」
ハ「もう一年だ」
ハルタが厳しい声で言った。
ハ「大人になってから過ごす一年と、ぼくたちの今の一年は違うんだ」
――――バチンッ！
次の瞬間、成島さんはハルタに飛びかかって激しい平手打ちをした。
小柄なハルタが吹っ飛ぶほどの勢いだった。
成島さんは今度は逆手に振りかぶり、ハルタがぎゅっと目をつぶる。
頬を打つ甲高い音が響いた。
ハルタはパンチドランカーのボクサーみたいにふらふらしている。
それでもキューブを離さない。
また頬を打つ音が響く。
千夏と西川さんが成島さんの背中に飛びつき、草壁先生が椅子から立ち上がろうとする。
ハ「きちゃ駄目だっ」
ハルタが声を荒らげた。その目をじっと六面に塗ったキューブに注ぎ、なにかを待っている様子だった。
西「あっ」
その声は西川さんだった。
成島さんの背中にしがみつきながら、ハルタが持つキューブを凝視している。
成島さんの息を呑む気配が伝わった。
キューブのブロックに亀裂が入り、花びらが落ちていくように色が剥がれ落ちている。
色が亀裂して剥離したブロックは九箇所あった。
ハルタが爪を立てると、麻布でできた下地は綺麗にめくれた。
その下に文字が書かれている。
ハ「きみの弟の祝福の言葉だ」
ハルタが器用に回転させて九箇所のブロックを一面に揃えていく。
出来上がった一面を成島さんに向けて見せた。
成島さんはキューブを奪い取った。
唇を動かしてその文字を読んでいく。
みるみるうちに目に涙の粒が膨らんだ。
頬を伝い、尾を引いて静かに落ちていく。
それから長い間積み上げてきた堤防が決壊するように膝を崩して泣いた。
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のの - 夜月さん» ありがとうございます！ (2016年4月7日 15時) (
レス) id: dd3ac278ec (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - fruitさん» 才能だなんて！そんな！光栄です！毎回、コメントありがとうございます！これからもお願いします！ (2016年3月17日 0時) (レス) id: ca0edcb47b (このIDを非表示/違反報告)
fruit - オリジナル・・・とっても面白いです！ワクワクしてます！すごいですね〜(*´∀｀)才能なんでしょうね〜(*´∀｀)羨ましいです！頑張ってください！ (2016年3月16日 23時) (レス) id: 1c29b9fd37 (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - あいさん» オリジナルは面白いかとても不安だったのですが、そう言ってもらえて光栄です！これからもどうぞよろしくお願いいたします！ (2016年3月13日 17時) (レス) id: ca0edcb47b (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - ののさん» ありがとうございます！ですが、ゼロからのお話なので更新のペースが遅くなるかもしれません…まことに申し訳ありません…ですが！よろしくお願いします (2016年3月13日 17時) (レス) id: ca0edcb47b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜月 | 作成日時：2016年2月12日 18時
