決勝進出 ページ40
得点版の数字が25を示したその瞬間会場が一斉に湧いた。
「今年の決勝は井闥山と稲荷崎だ！」
「井闥山は佐久早と古森、稲荷崎は宮兄弟に尾白かぁ」
騒ぐギャラリーと違ってまだコートに居る僕らはどこか冷静だった。終わったばかりの試合の熱は冷めないけど。
僕らはまだ決勝戦という勝たなくちゃいけない試合が残ってる。挨拶が終わってもチーム全体に午後から行われる決勝戦に向けての切れない緊張が走ったまま。
昼食はミーティングを兼ねてチーム揃って食べる。
「決勝の相手は井闥山や。練習試合では負けてるからな。ここで勝ってこい」
黒須監督が締めにそう言って時間まで休憩にすると解散を伝える。
緊張か、興奮か、冷め切らないものがあって休めない僕は稲荷崎の団体から離れる。ただ稲荷崎の名前が入ったジャージを着ていると周りの視線が痛いから会場の外まで行く。
「あ、佐久早さん」
なんで会場の外にこれから対戦するチームのエースいるんだ。タイミングが悪すぎる。
「稲荷崎のリベロ。……友井A」
「はい」
露骨に嫌そうな顔をされたけどその顔をしたいのは僕だって同じだということを忘れないで欲しい。
「佐久早さん、なんでこんなところにいるんですか？」
「中は人が多すぎる」
何も言わないのはどうかと思って一応質問してみる。
よし、これで会話はした。戻ろう。
「お前、中学は若利君のところだったんだろ。なんで稲荷崎にいんだよ」
背中を向けた僕に声をかけてきたのは佐久早さんの方だった。マスクをしているせいか少しくぐもった声が僕の耳に届く。
「……一言では説明出来ない事情がありまして」
「はァ？」
言葉を濁す僕に佐久早さんは眉を寄せる。
「あ、でも今稲荷崎にいるのは偶然です。引越し先から一番近い学校だったってだけの」
「……あっそ」
僕の答えは佐久早さんが望むものじゃなかったらしく、佐久早さんはさらに眉を寄せたあと何かを諦めたようにため息をつく。
でも本当に稲荷崎なのは偶然。そこがバレーの強豪だったのも。侑さんと知り合ったのも。なんなら水筒を忘れたのも。全て偶然。でなければ運命。どっちにしてもろくなものじゃない。
「じゃあ僕は失礼します。あとはコートで」
「……」
今度は断りを入れてから佐久早さんに背を向ける。佐久早さんは返事の代わりにまた眉を寄せる。
稲荷崎の団体まで戻ると勝手に行動するなと北さんから小言をもらった。
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蓮夜 - 面白かったです。主人公が凄くかっこいいし、兄のことをにぃといってるギャップが良すぎました。お疲れ様でした！ (5月14日 23時) (
レス) @page48 id: 574d664119 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - 今一番楽しみにしてる小説です(T . T)これからも応援してます〜！ (2020年5月2日 11時) (レス) id: 008e34b9a1 (このIDを非表示/違反報告)
ogofumi(プロフ) - 続編おめでとうございます！めっちゃ好きです。これからも応援してます。更新頑張ってください！ (2020年4月30日 21時) (レス) id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りろ | 作成日時：2020年4月30日 21時
